今週日曜の東京ではオークス当日の名物レース・フリーウェイSが行われる。
例年ならオークス前の10レース。ゆえにいまひとつ注目されにくい。みんなオークスのことで頭がいっぱい。フリーウェイSが発走する頃には、ファンも関係者もパドック周辺を埋め尽くしている。そういう意味では、ダービー当日のむらさき賞と立場が似ていなくもない。ただ、今年に限って言えばJRA70周年の特別編成に伴い9レースに行われるから、ゆっくり落ち着いて観ることができそうだ。
たかが3勝クラスの条件戦と侮ってはいけない。なにせ2年前の勝ち馬はテンハッピーローズである。福永祐一騎手を背に、ルーカスやアヴェラーレといったノーザンファームの良血馬を退けた。このレースぶりをしっかり頭に刻んでおけば、昨日のヴィクトリアマイルの馬券的中に近づいていたかもしれない。
フリーウェイSは1988年の創設以来、一度だけ芝1600mで行われたことを除けば、一貫して芝1400mで行われてきた。レース名の「フリーウェイ」は、言うまでもなく「高速道路」の意。その高速道路とは、すなわち東京競馬場の向こう正面を走る中央自動車道に他ならない。それにちなむレースである以上、スターティングゲートを高速道路の近くに据える必要がある。芝2000mやダート2100mでは高速道路の存在をイメージしにくい。
このレースでは馬場入場時に松任谷由美さんの名曲「中央フリーウェイ」の楽曲が流されることでも知られる。中央道を調布から西に向かって、当時は米軍の調布基地だった飛行場を過ぎて、高尾の山々に向かって走れば、やがて府中市内に入る。すると右に見えるのが競馬場、左はビール工場。高速道路から見える車窓の風景を並べているだけなのに、それがユーミンの手にかかると、ノスタルジックな小説のように聞こえてくるから不思議だ。そこは天才たる所以であろう。
フリーウェイSを勝ったのち重賞ウイナーに昇り詰めた馬はテンハッピーローズ以外にも、ダイナオレンジ、スプライトパッサー、シンコウキング、マグナーテン等々、列挙にいとまがない。果たして今年の優勝馬の未来はどうなるか。「中央フリーウェイ」の中では「この道はまるで滑走路♪」と歌われているが、人馬にとっては525.9mの直線こそが滑走路であろう。直線をトップで駆け抜けて、大舞台へと飛び立て。
***** 2024/5/13 *****