関東の梅雨明けが発表された。いよいよ本格的な暑さがやってくる。それに合わせたわけでもあるまいが、来週の南関東は重賞レースが用意されていない。小中学校の多くは明日が終業式だが、競馬番組も夏休みモードに突入する。
昔はもっとはっきりしていた。たとえば1992年7~8月の番組を振り返ってみよう。JRAでは、7/18-19、7/25-26、8/15-16の3週に渡ってサラ系平地重賞が行われていない。南関東ではもっと少なくて、この2か月間に行われたサラ系重賞は、関東盃(現在は「サンタアニタトロフィー」)とトゥインクルレディー賞(現在は廃止)の2鞍のみ。スパーキングレディーカップも、優駿スプリントも、習志野きらっとスプリントも、スパーキングサマーカップも、ルーキーズサマーカップも、フリオーソレジェンドカップも創設されておらず、黒潮盃は羽田盃の前哨戦として春に行われていた。
重賞で活躍するような実力馬は、春からの連戦で溜まった疲れを取り、さらに秋競馬に向けて英気を養わなければならない。そのためには、夏場は涼しい牧場でゆっくりと休養するのが当たり前だった。重賞をやろうとしたところで、肝心の馬が集まらなかったという方が実情に近い。
そこで夏場は条件馬の出番となる。普段は見向きもされない未勝利馬や下級条件馬たちが、番組の主役に祭り上げられるのである。むろん夏場を休みに充てるのはオープン馬だけとは限らないから、大半が10頭前後の少頭数競馬。しかも1日9鞍とか10鞍という開催が続く。たまたま出走頭数が多い500万条件戦がメインレースに据えられることも珍しくなかった。むろん見ている方は面白くはない。しかしそれが夏競馬なのだから、受け入れるしかないのである。
だが、我々は経験的に知っていた。夏競馬をおろそかにすると、秋の競馬で必ず痛い目に遭う。少頭数の下級条件戦でも印象に残る勝ち方を見逃してはならない。夏から秋は馬が大きく変わる季節。大化けの可能性を秘めている。真夏の太陽の下に、それでもなお輝く超新星を探すことが、かつての夏競馬のあり方だったように思う。
しかし時代は変わった。今や年間を通じてJRA重賞の行われない週末はない。馬券売上げを伸ばしたいという主催者側と、出走間隔を空けて使うトレンドに合わせて使い出しを早めたい厩舎側とで思惑が一致した結果の産物。ならば悪い話とも言い切れない。
それでも暑さには注意が必要だ。中京記念に出走予定だったアスクワイルドモアとエスコーラが回避というニュースが入ってきた。どちらも理由はコンディション不良だという。週明け月曜は二十四節季の「大暑」。人間が堪える暑さに馬が堪えぬわけがない。
***** 2024/7/18 *****