札幌記念の声を聞けば夏も終わりに近い。北海道では2学期が始まり、秋風が吹き始める頃合いでもある。とはいえ、いつもそうとは限らない。それを昨年の札幌記念で思い知らされた。札幌に降り立つと、気温31度、湿度98%のサウナ地獄だったのである。そのせいか、この日の7レースでは3連単1773万円の札幌競馬史上最高配当が飛び出した。そりゃあ馬もおかしくなりますよ。
場内で私の顔を見つけた社台グループの方が教えてくれた。今年はお盆を過ぎても涼しくなる気配がない。しかも前夜から当日朝にかけてまとまった雨が降った。おかけでこの蒸し暑さだという。
「馴れてない我々にはキツいよ。馬場も乾いてない。間違いなく去年とは違う札幌記念になる」
最後のひと言は意味深長だ。昨年の札幌記念には前年の覇者ジャックドールが連覇を目指して参戦。武豊騎手とのコンビで圧倒的1番人気に推されている。しかし、結果は2番人気プログノーシスの圧勝。ジャックドールは逃げることさえできぬまま6着と敗れた。ディフェンディングチャンピオンの大敗に場内は騒然としたが、前年と全く違うレースなのだから、前年優勝のアドバンテージなど最初から無かったのであろう。
札幌記念がGⅡに昇格したのは1997年。いきなりエアグルーヴの連覇で幕を開けたものの、その後連覇を果たした馬はいない。GⅡ昇格後の札幌記念優勝馬は26頭。うち14頭が再び札幌記念に出走しているが、連覇どころか二度目の優勝を果たすこと自体が極めて難しい。近年の札幌記念は連覇失敗の歴史でもある。
1997年エアグルーヴ ⇒98年①着
2000年ダイワカーリアン ⇒01年⑤着
2001年エアエミネム ⇒03年②着
2008年タスカータソルテ ⇒09年⑮着
2009年ヤマニンキングリー⇒10年⑭着
2011年トーセンジョーダン⇒13年⑬着
2013年トウケイヘイロー ⇒14年⑪着、15年⑨着
2015年ディサイファ ⇒17年⑫着
2016年ネオリアリズム ⇒18年⑭着
2017年サクラアンプルール⇒18年⑥着、19年⑬着
2018年サングレーザー ⇒19年②着
2019年ブラスとワンピース⇒21年⑤着
2021年ソダシ ⇒22年⑤着
2022年ジャックドール ⇒23年⑥着
2023年プログノーシス ⇒24年?
それでも今年のプログノーシスに連覇を期待する声は小さくない。金鯱賞を優勝し、香港クイーンエリザベスⅡカップで2着してからの臨戦過程は昨年とまったく同じ。着地検疫や函館競馬場入りの日程から、香港で負けた相手がロマンチックウォリアーであることまで同じとなれば、札幌記念もと考えたくもなるのも分かる。
違いがあるとすれば、昨年の札幌記念のコンディションが例年と大きく異なっていたことだ。暑さだけではない。芝は通常より2~3秒余計に掛かっていた。しかし今年は速い時計が続出する高速馬場。昨年、1コーナーでは後方に控えながら徐々にポジションを上げたプログノーシスが、今年も同じ戦法を取れるかどうかは分からない。私のプログノーシス(=予想)は当たらぬことで有名だが、昨年よりも恵まれた相手関係に、逆に落とし穴が潜んでいそうな気がしてならないのである。
***** 2024/8/13 *****