この顔に、ピンときたら

この土日の東京競馬場では5階のA・B・C指定席エリアを対象に顔認証システムが試験導入された。これまでは指定席エリアと一般エリアの通行時にはスマホを取り出して画面にQRコードを表示させてそれを読み取り機にかざす必要があったが、それが必要なくなるという。最近はスマートシートでじゅうぶんだと思う筆者も、物見遊山で指定席を購入。さっそく体験してみた。

指定席エリアへの初回入場時の作法はこれまでと同じ。スマホのQRコードを入口のスタッフに読み取ってもらう必要がある。しかし昨日は数人のスタッフがその先に待ち構えていた。そして「顔認証の登録をしませんか?」と誘われる。もちろんそのつもりで来たので「はい」と即答。すると指定席エリア内に設置された登録機の前に案内された。

Touroku

登録機のモニターには自分の姿が表示されている。モニター内のガイドの枠内に顔が映るよう、自分で顔の位置を動かせばよい。よきところで勝手に機械の方が登録してくれる。その間わずか2~3秒。注意事項としてはモニターではなく、登録機の上部に設置されたカメラに目線を向ける必要があるということくらいか。スタッフの方に「はい。終了です」と言われておしまい。あとは自分の席を探せばよい。ザっと見たところ大半の客が顔認証登録をしているようだ。

顔認証の登録をしておくと、指定席エリアから一般エリアに退出するときのQRコード確認が必要なくなる。これは思いのほかラクだ。ただし、顔認証をしていない客もゼロではないから、退出の際にいちいちスタッフから「顔認証登録はお済ですか?」と聞かれることになる。ただ、それも何度も出入りするうちに声を掛けられなくなった。おそらく顔を覚えられたのだろう。そこでも顔認証が行われているというわけ。ただしこちらはアナログ。

さて肝心の認証だが、指定席エリアへの入場口に認証機が2台設置されている。床に描かれた足型の位置に立って、やおらカメラを覗こうとするよりも先に認証が完了して驚いた。1秒もかからない。もちろんマスクをしてみても、眼鏡を外しても支障は無し。多少斜めを向いていてもアッサリ認証されるその性能には驚かされた。

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JRAは2019年にも顔認証の実証実験を行っている。ただし、このときは場内全域を対象としていた。目的も「あらかじめ登録した人を画像認識技術で本人確認できるか」とか「20歳未満を判別できるか」といったもの。タネを明かせば、この年に閣議決定された「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」に基づく実験に過ぎない。とにかくこのときはNTTデータ、パナソニック富士通の3社が参入した。しかし、今回の納入ベンダーは「グローリー」である。実際、グローリーの社員の方も出入り口に張り付いていた。どうにかしてエラーを起こしてやろうと企む客は、決して私ひとりではなかったはず。それでも目立ったトラブルは無かったようだ。

手の甲に特殊塗料のスタンプを押して、入場時にブラックライトにかざして本人確認していた時代が懐かしい。しかしそれほど昔のことでもないはず。コロナ禍は競馬場の景色を一気に変えつつある。しかし懐古主義の筆者でもこの顔認証には好意的な印象を覚えた。いちいちスマホを出して、デバイスロックを解除して、QRコードを表示させて、それを読み取り機にかざす、という4つのアクションはどう考えても面倒くさい。退出時も必要となれば、その手間は倍に膨らむ。

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昨日の昼、売店でビールとハンバーガーを買って自席に戻る際、両手が塞がったままでも指定席エリアに入れると分かったその瞬間、顔認証の素晴らしさを実感した。本格導入が待ち遠しい。

 

 

***** 2023/11/6 *****