右手の車窓に琵琶湖を眺めながら列車は北へと向かっている。京都を発ってから1時間あまり。「マキノ」という珍しいカタカナだけの名の駅で降り、さらに5分ほどバスに揺られて「メタセコイアと馬の森」に到着した。

馬と共に社会を豊かにする――。そんな理念のもと、持続可能な社会づくりに取り組む企業「TCCジャパン」が、昨年オープンさせた養老牧場。湖北の観光名所「メタセコイア並木」に隣接する敷地には、11頭の馬たちが暮らしているという。そのうち8頭が引退競走馬だ。

厩舎および放牧の見学は有料(1500円。ただしTCCの会員は無料)。馬たちへの支援だと思って、喜んで払いたい。11時過ぎに到着したときは、ほとんどの馬がパドックに放たれていたが、厩舎ではポニーが扇風機の風を浴びてた。この子はキングボーイ君。なんと御年29歳だという。

長老への挨拶を済ませてパドックに出ると、フルーキーが勢いよくこちらに駆け寄ってきた。

きっとニンジンをもらえると思ったのだろう。しかし、残念ながら私はニンジンを持ってない。それが分かると、「それなら用はねぇ」とばかりに、クールに背中を向けてどこかへ行ってしまった。
2015年チャレンジCを勝った、れっきとした重賞ウイナー。さらに生涯獲得賞金は約2億5千万円。いずれの実績も、ここの馬たちの中では群を抜く。しかも2010年生まれの16歳は、先ほどのキングボーイに次ぐ年長馬でもある。しかし、5頭一緒に放たれているパドックの中でのヒエラルキーは最上位ではないようだ。そのあたりが面白い。
競走馬のセカンドキャリアは古くて新しい問題だ。かつては競馬に関わる人間がおいそれと口にできぬ、いわばタブー領域だった。ところが最近になってJRAが専門部署を作るなど、この問題と向き合おうという空気が漂っている。というのも、世界有数の馬券売上を誇るパートⅠ国でありながら、セカンドキャリアに対する取り組みが不十分であることを国際会議で名指しされて、ようやく重い腰を上げたに過ぎない。外圧が無いと何も変わらない日本らしさがここにも現れている。

動物愛護の視点から言うと、競馬の存続は我々が思うより実は安泰ではない。実際、海外ではドッグレースが次々と姿を消している。セカンドキャリアの問題は、競馬の存続を左右するかもしれない。数年前までは「何をバカな」と笑われた話が、現実のものになる可能性が出てきているのである。
***** 2026/8/29 *****










