侮れぬ市役所

三鷹に出向いたついでに、とあるうどん店を訪問した。

ずっと前にテレビ番組で紹介されていた一軒。しかし、いかんせん大阪から訪れるには遠過ぎる。そのうち東京競馬場のついでに行ければよいか。そう思っていたら、仕事場が東京に戻り、しかも今日は三鷹に行ってこいという。これはラッキー。それで念願叶って食べた一杯は……う〜ん、正直そこまでではなかったですね。

いや、美味しいうどんであることは間違いない。とくに鶏天は美味しかった。ポイントは麺。讃岐を謳っているが、いかんせんコシがない。もちろんコシが無い讃岐もあるだろうから、お店にすれば文句を言われる筋合いでもなかろう。非は勝手に期待を膨らませ過ぎたこちら側にある。

ヘコみながら目的地へ向かったが約束の時間にはまだ早い。しかし周囲を見渡しても武蔵野市役所があるだけ。でもたしかココの最上階にはカフェがあったはず。そこで時間を潰すとしよう。エレベータで8階に上がって、食堂の前を通り過ぎる。するとこんな幟が目に飛び込んできた。

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武蔵野地粉うどん!

ついさっき一杯食べたことなどすっかり忘れて食堂に飛び込んだ。

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注文を受けてから茹でる全粒粉入りの麺は美しく、香り、コシとも申し分ない。合わせるのは豚肉の脂がたっぷり浮いた濃い目のツユ。これがやたらと旨い。さすが武蔵野うどんの本場。聞けば小麦は地元産のみを使っているという。たかが役所の食堂と侮るなかれ。眼下に広がる武蔵野の景色を眺めながら食べれば美味しさもいや増す。

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「武蔵野」の範囲は地理的には荒川と多摩川に挟まれたいわゆる武蔵野台地を指すが、広辞苑によれば「埼玉県川越以南、東京都府中までの間に拡がる地域」とされているし、国木田独歩によれば現在の川崎市の一部も武蔵野に含まれる。とにかく広い。広いから「武蔵野」と名のつくものは、銀行、大学、JRの路線も含めて数知れぬが、中でも「武蔵野市」はその中心地と言っても過言ではなかろう。ならば最初から食すべきは武蔵野うどんだった。

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競馬ファンにとって「武蔵野」と言えば、先週行われたばかりの武蔵野ステークスをおいてほかにあるまい。かつて2100mで実施されていた当時の活躍馬には、キソジゴールドやデュークグランプリといった武蔵の国の野武士を思わせるタイプが多かった。のど越しがツルリと軽快な純白の讃岐に対して、薄黒くて太い麺をワシワシ食わせる武蔵野うどんのイメージもそれに近いものがある。

 

 

***** 2023/11/16 *****