浦島太郎

プロ野球は、いよいよストーブリーグが本格化。大物選手の移籍やFA争奪戦の陰に隠れるように、2選手の移籍が報じされている。楽天を戦力外になった炭谷捕手は西武に移籍。さらに巨人を戦力外となった鍵谷投手は日本ハムが獲得するらしい。いずれも古巣への復帰という点で興味が沸いた。

なにせ私も古巣に出戻ったばかり。昨夜は大井へ挨拶に行ったが、業務用出入り口に巨大なゲートが設置され、スタンド上階にあったはずの店がない。あるいは同じ店なのにメニューがガラリと変わってしまっている。そもそも関係者も知らぬ顔ばかり。その変貌ぶりにすっかり浦島太郎の気分を味わった。

「古巣復帰」とか「出戻り」という言葉が馬に使われることもある。典型的なケースはJRAと地方競馬間の移籍であろう。大井でデビューしたボンネビルレコードはJRAの堀井厩舎に移籍したのちに帝王賞を勝ち、8歳の春に古巣の大井に戻った。逆にファストフォースはJRAで未勝利を勝ち上がることができず、地方に移籍して一定の実績を残したのち、JRAに戻って高松宮記念を制している。

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パターンとしては後者、すなわち「JRA⇒地方⇒JRA」の方が多いと思われるが、再転入後にJRAのGⅠを勝った例となるとファストフォース以外に聞いたことがない。交流GⅠを含めてもサマーウインドゴルトブリッツ、ダンシングプリンスくらいではないか。ただし、近年になって活躍馬は増えている印象はある。

未勝利を勝ち上がれずに地方に移籍した馬のJRA再転入自体が、それほど簡単ではない。20年ほど前までは「地方で1勝もしくは5走」と、とてもハードルとは呼べぬルールだった。しかし今では「3歳は2勝、4歳は3勝」と、しっかりハードルの体を為している。

仮に3歳9月の地方転出なら4か月の間に2勝しなければならない。しかも地方入厩馬のレベルも最近は上がっている。デビューが遅れた強い馬がいるかもしれない。同じ境遇の元JRA所属馬同士の争いになる可能性だってある。古巣復帰後の活躍馬が増えているのは、再転入のハードルが高まったことと無関係ではなかろう。JRA再転入は一定程度の強さの証明でもある。

とはいえ、再転入のハードルをクリアするために馬に無理を強いてしまっては元も子もない。逆にポンポンと2つ勝てば、その環境が馬にとって良かったのではないかと考えてみることも必要になってくる。馬の居場所を馬本位で考えてあげることは、人間に課された大きな仕事のひとつ。多くの場合「古巣復帰」は好意的に扱われるが、それが当事者にとって幸せかどうかはまた別の話だ。

 

 

***** 2023/11/17 *****