JCが来れば思い出す

ジャパンカップが明後日に迫った。セントレジャーを勝ったハーツクライ産駒・コンティニュアスが回避したため、外国馬はフランスから参戦する6歳セン馬のイレジンただ1頭。寂しいが、それだけイクイノックスの強さが海外に知れ渡っていることの現れであろう。

このイレジンに関して気になることがある。アルファベットでの馬名表記は Iresine。これが日本語で「イレシネ」と呼ぶアメリカ原産の観葉植物の綴りと、まったく同じなのだ。Manduro産駒の Iresine の馬名由来は知らないが、もし同じ観葉植物から取ったのだとすると、ちょいとややこしい。

むかしバンブーゲネシスという馬がいた。安田記念スプリンターズSを勝ったバンブーメモリーの半弟で、第1回のマーチステークスの覇者でもある。

Genesis

この馬をアルファベットで表記すると Bamboo Genesis である。これをなぜ「バンブー・ゲネシス」と読むのか。当時はそれが不思議でしょうがなかった。バンブーは英語読みでゲネシスはラテン語読み。統一感がない。英語らしく「バンブージェネシス」としたところで9文字に収まるのに。

凱旋門賞では「ヘリシオ」と表記されていた Helissio が1996年のJC来日時には「エリシオ」となり、翌年のJCを勝った Pilsudski が原語読みの「ピウスツキ」にも、英語読みの「ピルスドゥスキー」からもかけ離れた「ピルサドスキー」で落ち着いたりと、この手の問題はとにかく根が深い。とくに種牡馬として輸入する場合には、いったんシンジケートを組んでしまうと、あとから馬名表記を変更することは難しいそうだ。

Jc97

しかし一方では、日本人の耳に馴染む響きというものもある。原音主義を貫き通せば良いというものではない。それが問題をややこしくする。

1970年のリーディングサイアーガーサント(Guersant)は、フランスでデビューし、仏2000ギニーを勝ったれっきとしたフランスの馬。仏語で名付けられたのなら、「ガーサント」ではなく「ギュルサン」であろう。

しかしフランスで生まれた馬の馬名はフランス式に発音すれば良いかというと、必ずしもそうと言い切れない部分がある。そも競馬に国境はない。フランスで生まれ、アラブの王族に買われて名付けられた馬が、アメリカで走り、ドイツにトレードされることもあろう。その間、馬名の綴りは変わらなくても、呼び方は変わっている可能性がある。実際、フランスで走ったガーサントは、のちに英国に移籍し、その後日本にやってきた。もし彼がフランスから日本に直接輸出されていれば、シャダイターキンやニットエイトの父は「ギュルサン」だった可能性もある。

 

 

***** 2023/11/24 *****