市場メシ

朝から豊洲市場を訪れた。

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移転からはや5年。行こう行こうと思っていながら、なんとなく先延ばしになり、そのうちコロナ禍に見舞われ、やがて私が大阪に行くことになった。なんと5年越しの初訪問である。そしたら築地時代にお世話になったカレー屋さんを発見。筆者が築地の近くで夜の仕事をしていた当時、よく朝カレーを食べに来たのがこちらの「中栄」だ。

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築地で営業していた当時、狭い店内は市場で働く関係者でいつも満員だった。しかしカレーであれば提供は早い。食べる方もサッと食べて席を立つ。そもそも「市場メシ」とはそういうものであろう。牛丼「吉野家」の1号店が築地市場内に誕生したのも、そういう事情と無関係ではない。

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こちらの名物はこの「合がけカレー」。インドカレー(辛口)、ビーフカレー(甘口)、ハヤシライスのうち二品をチョイスして味わうことができる。今日はビーフ&ハヤシにチャーシュートッピングを注文。ほどなく運ばれてきたこのひと皿を見て欲しい。右が牛すね肉の島が浮かぶハヤシの海で、左はビーフカレーの海。キャベツの山からふたつの海を分かつように貫くチャーシューの橋は、さながらレインボーブリッジといったところか。これらをスプーンひとつでぐちゃぐちゃに混ぜて食べるのが築地流。豊洲に移転したとはいえこの流儀は変わるまい。

こちらのお店は、まだ魚河岸が日本橋にあった明治時代から魚屋をやっていたと聞く。カレー屋に転身したのは大正元年だというから、その歴史の深さは半端ではない。名物の「合がけ」は職人のわがままなリクエストから誕生したそうだ。私のあとに入ってきた客も、「キャベツにもルーかけて」とか、「玉子スープの熱くないところ」などと好き勝手な注文をする。そんな注文にひとつひとつ応えるのも築地流。豊洲に場所は移っても築地の魂は消えてない。

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日が暮れてから豊洲から船に乗って日本橋へと向かう。東京都の肝入りで先月から始まった舟運だという。隅田川を上り、永代橋をくぐったところで日本橋川へと左折。頭上を走る首都高速の橋脚の間を縫うように進むと、やがて日本橋の船着き場が見えてきた。

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わずか20分の船旅。だが地下鉄よりはぜんぜん楽しい。そういえば昔は大井競馬開催日に両国から大井競馬場まで競馬専用船が運行されていた。その名も「トゥインクル号」。モノレール大井競馬場前駅の真下、京浜運河沿いにある船着き場が使われなくなって久しい。東京都はこちらの舟運の復活にも力を注いでくれないだろうか。

 

 

***** 2023/11/28 *****