懐かしのダービースタリオンステークス

ダービー当日の東京8レースが「青嵐賞」として行われるようになって久しい。「青嵐」とは、青葉のこの時期に吹く、やや強い風のこと。2勝クラスの芝2400m戦で、ダービーと同じコースで行われることから、嫌でも注目を集めることとなる。2017年の勝ち馬はルックトゥワイス。このあとに行われるダービーの勝ち時計を3秒以上も上回る好タイムで圧勝してみせた。

2017年 青嵐賞 ルックトゥワイス 戸崎圭太

青嵐賞が始まったのは1993年のこと。その前年まで、このレースは「ダービースタリオンステークス」として行われていた。日本をはじめ各主要国のダービー優勝馬の産駒のみによる芝2400mの1000万条件戦で芝2400mは青嵐賞と同じ。ちなみに最後に行われた1992年の出走メンバーは以下の通りである。

 1992年5月31日 東京7R 芝2400m 混合
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 ①アストリートワン(父カツラノハイセイコ郷原
 ②メイショウソロモン(父ミスターシービー)南井
 ③エイティアーダ(父アズマハンター)北川
 ④イナドチェアマン(父ネーハイジェット)安田隆
 ⑤シェイビングボーイ(父ミスターシービー)小迫
 ⑥シンボリフォルテ(父シンボリルドルフ)岡部
 ⑦グランバトール(父ハクホオシヨウ)田中勝
 ⑧スイートシャリマー(父シンボリルドルフ)坂本
 ⑨タケノボイス(父ハイセイコー)柴田政

ハイセイコーアズマハンターの産駒が出ていることを不思議に思われるかもしれないが、当時の出走条件は「日本ダービー1~5着馬、および主要国ダービー優勝馬の産駒のみが出走できる」というものであった。混合レースだというのに、全出走馬が父内国産馬というのも興味深い。ちなみに勝ったのはメイショウソロモン。2着シェイビングボーイでミスターシービー産駒のワンツーフィニッシュだった。

1993年に姿を消したダービースタリオンステークスだが、2013年に一度だけ復活している。青嵐賞が名前を変えて行わたわけだが、その出走資格は「日本ダービー勝馬の産駒のみ」であった。14頭が出走したこのレース。その出走馬の父の内訳はこのようになっている。

 ディープインパクト 4頭
 キングカメハメハ 3頭
 タニノギムレット 2頭
 スペシャルウィーク 2頭
 ネオユニヴァース 1頭
 ジャングルポケット 1頭
 タヤスツヨシ 1頭

出走資格を日本ダービー馬の産駒のみに絞ると聞いた時、頭数が揃わないのではと心配したことを覚えている。前記した1992年は9頭立てで行われたが、シェイビングボーイとグランバトールは500万条件から格上挑戦で、アストリートワンはダート1200m戦を勝ち上がってきたばかりだった。JRA自らが出走馬集めに奔走したが、それでも頭数がそろわず、ついに「日本ダービー勝馬の産駒」というレースの趣旨を曲げてまで、どうにか馬連が発売できる9頭を揃えたに過ぎない。この年を最後にダービースタリオンズSが廃止になった裏には、そんな事情もあった。

しかし、いざフタを空ければ14頭が揃うのだから私の心配は杞憂そのものである。よくよく考えれば2007年には○父制度が廃止され、日本ダービー勝馬の多くは種牡馬として成功していた。1992年の種牡馬ランキング首位はノーザンテースト、2位はリアルシャダイ。ダービー馬では、ようやく10位にシンボリルドルフが顔を出す程度。すでに時代は変わっていたのである。

2013年に復活した一戦を制したのはカナロアで、半馬身差の2着はスーサングレート。ディープインパクト産駒とキングカメハメハ産駒のワンツーだった。種牡馬界においても、この2頭の功績は計り知れない。彼らは既にダービー馬の父となり、そして今年は父子3代ダービー制覇の偉業を目指している。昭和の時代には考えられなかったこと。「ダービー馬はダービー馬から」は古くから使われる格言だが、ここへきてようやく実態の方が言葉に追いついた感がある。

 

***** 2024/5/21 *****