史上8頭目の快挙へ

今週の関東メインは古馬牝馬によるハンデGⅢターコイズS。関西の人にとっては印象が薄いかもしれないが、関東のファンには師走の中山の名物として馴染み深い。名牝スカーレットブーケが58キロをものともせず勝って、引退の花道を飾ったのは1991年のことだ。

古馬牝馬による唯一のオープン特別として長らく独特の存在感を誇ってきたこのレースが重賞に格上げされたのは2015年のこと。関東のいちファンとして、ちょっと嬉しい反面、寂しい気持ちもないわけではなかった。ダイナカールキョウエイタップホクトベガキストゥヘヴンといったGⅠ馬の走りが、ガラガラの競馬場で間近に見ることができる。オープン特別にはそんなささやかな愉悦があったように思う。

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シーズン末期の牝馬限定戦という特徴のせいか、同じ馬が年を跨いで活躍するケースも目立つ。いわゆるリピーター。コスモマーベラスは2005年に2着したあと、06年、07年と連覇を果たした。07年のレースで2着に敗れたザレマも翌年の同レースを勝っている。17年、18年はミスパンテールが連覇を果たした。デンコウアンジュはその両方のレースで人気薄ながらも3着に突っ込む健闘を見せ、高配当を演出している。

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そして今年は新たな記録が生まれるかもしれない。一昨年、昨年とこのレース連勝中のミスニューヨークが3連覇を目指して登録してきた。JRA同一平地重賞3連覇となれば、アルバート(15~17年ステイヤーズS)以来、史上8頭目牝馬としては初の快挙となる。

 セカイオー(鳴尾記念 1956-1958)
 シゲルホームランセイユウ記念 1993-1995)
 タップダンスシチー金鯱賞 2003-2005)
 エリモハリアー函館記念 2005-2007)
 マツリダゴッホオールカマー 2007-2009)
 ゴールドシップ阪神大賞典 2013-2015)
 アルバートステイヤーズS 2015-2017)

それが困難を極めるチャレンジであることを説明する必要はあるまい。3連覇を狙って惜しくも2着に敗れたシーイズトウショウデュランダルのレースを思い出すたび、我々はその難しさを再認識してきた。

過去に3連覇を達成した7頭のうち、タップダンスシチーマツリダゴッホゴールドシップはGⅠを勝つほどの実力の持ち主。至難であるはずの3連覇をGⅡで達成しているのは、さすがと言わざるを得ない。

さらに、決してGⅠ級とは言えないエリモハリアーも、函館競馬場の適性という点では突出した能力を持っていた。同様に3600mという距離も現代競馬では特殊領域と言って良い。アルバートステイヤーズS3連覇も適性によるところが大きいと思われる。

一方で、多少特徴的な形状ではあるにせよ、ターコイズSの中山1600mに特別な適性が必要だとは聞いたことがない。活きの良い3歳馬も6頭登録してきた。ミスニューヨークの3連覇に不安がないとは言えない。とはいえ強調材料もある。鞍上のミルコ・デムーロ騎手はオメガパフュームで前人未踏の東京大賞典4連覇を為した連覇の達人。「3連覇くらいどうってことないよ」とばかりにあっさり達成してしまっても、別に驚く必要はないのかもしれない。

Omega 

 

***** 2023/12/12 *****