常連の行方

今にも降り出しそうな曇り空を眺めながら浦和へと向かった。

しかし浦和競馬場ではない。降りたのは武蔵浦和駅。そこから線路沿いに15分ほど歩くと目的地が見えて来た。

ロッテ浦和球場プロ野球千葉ロッテマリーンズ2軍の練習場。ここで千葉ロッテマリーンズ楽天イーグルスイースタンリーグ公式戦が行われる。先発投手は楽天がルーキーの大内投手。ロッテはベテランの美馬投手。親子ほど歳が離れた両投手の投げ合いで試合が始まった。

観客は70~80人といったところか。熱心にスコアを付けている年配男性がいると思えばカメラを持っている若い女性もいる。ほとんどが一人客。たまに応援ともヤジとも言えない大声が飛ぶ。静かだから選手にも聞こえているに違いない。選手に顔を覚えられている常連客も多いみたいだ。

ちなみに入場は無料。座席はお世辞にも見やすいとは言えないが、とにかく選手が近い。この雰囲気、なにかに似ているとずっと考えていたのだが、そうだ、ひと昔前の地方競馬はこんな雰囲気だった。ただし、この球場はまもなく移転することが決定している。昭和の点景が消える流れは止めようがない。

途中で抜け出して球場の周辺を歩いてみる。すると新幹線のガード下にお洒落な外観のうどん店を見つけた。

その名も「澤村」。思わずロッテの投手を連想しそうなお店で出されるうどんは、ぶっとい麺を肉汁に付けてワシワシ食べる武蔵野うどん。15時過ぎだというのに広い店内はほぼ満席だった。人気店なのだろう。おススメだという肉汁うどんを「肉ダブル」で注文。肉汁うどん760円。肉追加220円。いずれも税込み。安い。

注文からわずか3分。早くもうどんが運ばれてきた。10人以上いるスタッフさんは大半が女性。彼女らがてきぱきと動いて、待ち時間のストレスを感じさせない。うどんは見込み茹でだが、客の回転が早いから、実質的には茹でたてが味わえる。

武蔵野うどんに多い褐色の麺はガシッと歯ごたえじゅうぶん。のど越しを楽しむというよりは、よく噛んで小麦の風味を味わいたい。つけ汁も濃厚な味わいで、バラ肉とネギがたっぷり入っている。豚の脂が滲み出たつゆの旨いこと。ややもすればくどさを感じかねないところだが、それをネギがサッと抑えてくれる。これぞ武蔵野うどんの真骨頂。人気の秘密は「安い」と「早い」に加え、しっかり「美味い」を加えた三拍子が揃っていることであろう。

客の大半は常連のようだ。毎日食べても飽きぬ味がここにある。こういう店に気軽に通えるご近所の方が、少し羨ましい。

さて、常連と言えば今週の天皇賞・春。ディープボンドは4年連続出走がほぼ確実。3年連続2着のシルバーコレクター返上なるか。そして現時点では出走できるか微妙なメロディーレーンだが、もし出走が叶えば5年連続ということになる。トウカイトリックの8年連続出走の記録には及ばぬが、牝馬としては異例であろう。常連組の活躍にも注目の天皇賞だ。

 

***** 2024/4/23 *****