第二の人生を切り開け

先週は怒涛の忘年会3連闘。ひと昔前なら他の話題は出ないほどウマの話一辺倒となったところだが、最近の飲み会での話題と言えば「病気」か「定年後」のどちらか。あるいはその両方に陥りがちだ。先日55歳になったばかりの身としては、後者の話題には特に力が入る。

「リタイアしたら毎日朝から夕方まで競馬三昧だ」

若い頃はそう考えていた。筆者が住む南関東には原則として競馬非開催日はない。朝のラッシュが終わった頃合いを見計らって競馬場に出かけ、夕方のラッシュが始まる前に家路に着く。そんな天国のような毎日を手に入れるために汗水流して働いてきたというのに、気づけば大井はともかく、川崎も、船橋も、浦和ですらナイター開催に舵を切ってしまった。老体に夜の電車移動は厳しい。しかも競馬場はどこも席数削減に動いている。思い描いたセカンドライフは遠のいた。ビジョンが定まぬまま隠居の日だけが近づいている。その日まで、もう5年もない。

午後になって新装なった馬事公苑に足を運んでみた。RRCファイナルラウンドの最終日が行われているのである。

RRCとは「Retired Racehorse Cup」の略。つまり「引退競走馬杯」である。

その目的は

①引退競走馬の活躍の場とセカンドキャリアの形成
②人材育成を含めたリトレーニング技術の向上
③ファンの拡大と社会認知度の向上

これらを図ることであり、2018年に始まった比較的新しい大会だ。

実は先週も「ジャパンブリーディングホースショー」という似たような大会があったが、お客さんの入りは今ひとつだった。だが、今週は馬場馬術にブラストワンピースが出場したこともあり、午後に入ってもお客さんの数は多い。少なくとも目的の③はクリアであろう。

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障害飛越には31頭がエントリー。すべて元競走馬だからほとんどの馬に馴染みがある。12番目に登場したダノンキングダムは、ノーザンファーム生産で安田隆行厩舎に所属したステーゴールド産駒。2017年2月のゆりかもめ賞を勝ってダービーを夢見た。出走は叶わなかったものの、6歳まで現役を続け6勝なら立派であろう。今日は2落下で29位と振るわなかったが、長い目で見守りたい。

Danon2

19番目に登場したジナンボーはご存じアパパネの2番子。新潟記念で2年連続2着。重賞級の能力は誰もが認めるところだが、あとちょっとだけ運が足りなかった。GⅠにも3度挑戦。アーモンドアイがGⅠ8勝目の記録を作った天皇賞秋にも出走して7着している。

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ジナンボーは先週のジャパンブリーディングホースショーにも出場していたから、いわば連闘。それでも今日は減点0で頑張った。しかしジャンプオフで敗れてしまったあたりは現役当時を彷彿とさせるものがある。

Jinan

ほかにもグローブシアターやクリアザトラック、ショウナンアンセムに代表されるかつての人気馬たちが、大勢の観客から拍手を浴びていた。中には競馬場を思い出す馬も一頭くらいいたかもしれない。いずれにせよ元競走馬がここまで障害を飛べるようになるまでには、相当なトレーニングがあったに違いない。彼らの活躍が、多くの馬たちのセカンドライフを切り開くことに繋がる。そう思えば飛越のひとつひとつが尊くてならない。それに比べれば私のセカンドライフなど些細な問題だ。

 

 

***** 2023/12/17 *****