水道橋と聞いて

最近はすっかり野球三昧。今日は朝10時に東京ドームへとやってきた。巨人vsヤクルト戦はナイター。試合開始まで8時間もあるというのに、ドーム内ではすでに試合の準備が始まっている。フィールドはセットアップ済み。バックヤードの搬入口はおおわらわ。「ヴィーナス」の皆さんもリハーサルに余念がない。それでも無観客のスタンドが醸し出す静寂感は圧倒的だ。

昼過ぎに時間が空いたので、隣のオフト後楽園を覗いてみることに。今日は平日だからウインズの営業はない。それでもオフトフロアの混雑ぶりには驚かされた。GWで仕事が休みのおじさんが大挙してやってきたのだろうか。ガラガラのドームとは対照的。それでもひと昔前の場外馬券売り場に比べれば午前中の公園のごとき空きっぷりであることは間違いない。

1949年に開業したウインズ後楽園・オフト後楽園は、場外馬券発売所としては、売上、広さ、そして入場者数ともに日本一を誇る巨大場外。その巨大さを以てしても、競馬ブームの折には窓口に並ぶ客の列が場外にまで溢れ出て、ぐるりと建物を取り囲んでいた。当然、レース発走締切時刻までに買えない客も出てくる。そのたびに客が暴れた。なんとかしろ! 俺らは客だぞ!!

JRAが取った窮余の策は、「大レースに限り馬券発売を特券(千円券)のみとする」というもの。しかも、慢性的な混雑が社会問題化していたウインズ新宿に至っては、「常時特券のみ」という暴挙に出たのである。実現には至らなかったものの、「5千円券」「1万円券」の発売も真剣に検討された。千円券を「特券」と呼ぶのなら、もし1万円券があれば何と呼ばれてたのだろうか。「超特券」ですかね?

ともあれ、発売単価を上げることしかできなかったのだから、いかに場外馬券売場の混雑対策が難しいものだったか想像できるだろう。中日が巨人のV10を阻止し、キタノカチドキが春のクラシック2冠を制した1974年、この年、JRA(当時は日本中央競馬会)の売り上げ総額7700億円のうち、場外での売り上げが初めて50%を突破した。競馬場で観戦するよりも、場外で馬券勝負に徹する場外馬券時代に突入したのである。

開門に合わせてドームに戻ると、瞬く間に4万の座席が埋まった。

そこから半世紀を経た昨年のJRA馬券売上は3兆2754億円。そのうち85%をインターネット投票が占めた。いまや場外の発売割合は1割にも満たない。そんな時代なら場外が空いていると感じるのも当然だが、それでも場外に足を運ぶファンが一定数存在していることを忘れてはならない。その一方で、後楽園球場から東京ドームへ時代を経ても、野球ファンは変わらずこの地にやってきている。競馬、野球、遊園地、ボウリング、プロレス。水道橋と聞いて思い浮かぶイメージは様々あれど、どれも楽しいものばかり。それが水道橋だ。

 

***** 2024/5/1 *****