30年ぶりのジャパンカップ

今年の東京開催最終日は気温6度。朝からの冷たい雨が上がり切らない東京競馬場ではあったが、そこで繰り広げられた大一番は今年いちばんの熱さだった。入場者数8万5千人は今年のJRAで最多。それだけ多くの人が見たいのだから、事前予約が必要な座席が確保できないのも仕方ない。それで久しぶりにGⅠレースを立ち見した。

ジャパンカップを4コーナーで観たのは1993年以来のこと。勝ったレガシーワールドよりもゴール板を誤認して2着に敗れたコタシャーンの印象の方が強い。当時は凱旋門勝馬の来日として注目を集めたアーバンシーガリレオシーザスターズの母として競馬史にその名を残す名牝になっているし、ドイツから参戦していたプラティニもヴェラアズールの血統表の3代前に登場する歴史上の存在だ。30年の歳月を感じずにはいられない。

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4コーナーでの観戦にはワケもある。今日の目当てはパンサラッサ。縁あって昨年秋頃から応援するようになった。ただ、ドバイワールドカップの直後に繋靱帯炎を発症。今日は8か月ぶりの復帰戦であると同時に引退レースになる可能性もある。パンサラッサの走りを瞼に焼き付けるためには、どこで観るのがベストだろうか。考え抜いた結論がこの4コーナーだった。

1000mの通過タイムが57秒6。故障明けでもその逃げ脚に翳りは見えない。4コーナーでも後続との差は3秒。遠くスタンドから地鳴りのようなどよめきが聞こえた。しかし坂を上がったところで、急にペースダウン。昨年の天皇賞秋のような脚は残っていない。次々と後続に交わされて結果12着に敗れた。

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パンサラッサの矢作調教師は「悔いはない」と納得のコメントを残した。私も久しぶりに「外連味のない逃げ」を観た気がする。すなわち小細工なしの逃げ。ハイペースの逃げを打って、3番手追走の馬が後続を4馬身も突き放して圧勝したら、もはやその勝ち馬を褒める以外ない。イクイノックスの強さを証明し、8万5千人が「凄いものを観た」と思えるレースを演出したのは、間違いなくパンサラッサである。イクイノックスが主演男優賞なら、助演男優賞はパンサラッサで間違いなかろう。

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パンサラッサの進退について矢作師は明言を避けた。現役続行の可能性もなくはない。それでも、ここでひとまずパンサラッサに感謝をしておこう。レジェンドテイオーツインターボセイウンスカイシルポート、そしてパンサラッサ。彼らの強靭な逃げがなければ、数多の名勝負は実現しなかったかもしれない。30年前のJCを逃げたのはメジロパーマー。彼の逃げも小細工無しだった。

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***** 2023/11/26 *****