対決、人間ドック

早朝から築地界隈を行ったり来たりした。午前中は人間ドック、午後は耳鼻科と眼科のハシゴである。つまり昼食を挟んで、眼圧や聴力を二度検査することになる。かなり面倒くさいが、待合室で過ごす時間など競馬新聞を読んでいればあっという間に過ぎよう。むろん全ての診療が済めば、ただちに川崎の佐々木竹見チャンピオンジョッキーに駆け付ける。今日は忙しくなりそうだ。

人間ドックの山場はふたつ。中盤に聳える胃の内視鏡と掉尾を飾る医師との問診。どちらも手強い。

最近の内視鏡は鼻から通すタイプが浸透しているが、こちらの病院で使用されているのは呪わしき口挿入型。看護師さんに背中をさすられ、涙を浮かべながら嗚咽と戦い、終わったら「よくがんばりましたね」と誉められるのである。いい歳こいて恥ずかしい。今年もその戦いに挑む日がやって来た。

しかし今年は作戦を考えている。ファイバーケーブルだと思うからオエッとなってしまうのである。ならば、うどんだと思うことにしよう。ちょっと太目のうどん。それを噛まずに飲み込む。いつもやっていることではないか。どうせなら内視鏡ケーブルの喉越しまで味わってやれ。

そう思っていざ検査開始。すると……。

やっぱ無理。オエーーッ!ゲホッ!

メソメソ泣きながら残りの検査を終え、軽い食事をとって着替えも済ませると、いよいよ最後の関門「問診」が待ち受けている。結果を見ながら、医師や看護師があれこれ指摘するのだが、久々だったせいもあってか今回はことのほか絞られた。

「A判定の項目のほとんどは上限ギリギリですからね。来年は全部D判定でもおかしくないですよ!」

……とまあ、そんな具合。特に今回は、これまで問題のなかった中性脂肪と尿酸の数値が悪かったらしい。

「炭水化物と魚卵の摂り過ぎに注意すること! わかりましたか!?」

「ハイハイ」と生返事をしながら、さて昼は何を食べようかと考えているのだから救いようがない。とはいえ、これ以上持病が増えると、さらに病院のハシゴをしなくてはならなくなる。それは避けたい。気を付けよう。

その後、耳鼻科と眼科の診察を終えて川崎へと移動。とりあえず無事終了を祝う一杯をと川崎駅近くの店の暖簾をくぐった。

一杯と言っても酒ではない。昨年オープンした「山下本気うどん」で釜明太醤油バターうどんをオーダーした。しかしコレって……。

炭水化物に魚卵じゃねぇか!

そんなお叱りは甘んじて受けねばなるまいが、あらためて一本一本の麺を見つめる内視鏡に見えないこともない。まずはこのうどんで特訓。来年の内視鏡との戦いはすでに始まっている。

 

***** 2024/1/30 *****