シン東京ダービー

昨日はラムジェットのことが書けなかったので、東京ダービーの話の続き。

筆者にとって5年ぶりの東京ダービー観戦は、慣れ親しんだゴール前のカメラマンエリアではなく、スタンドから観るものに取って変わった。すぐ頭上をジェット機が飛び交う東京ダービーの景色は、これまでとはまったく異なる。とはいえ、そもそも今年は改革元年。どこを見ても景色は変わるはず。新時代の東京ダービーに向けて気持ちをリセットするにはこれも悪くあるまい。

圧倒的1番人気に押されているのはラムジェット。これまで追い込みで勝利を重ねてきた同馬が、スタートから押して3番手に付けると1周目のゴール前ではスタンドから大きな歓声が上がった。逃げるアンモシェラ、それをピタリとマークするサトノエピック、そしてラムジェット。JRAの3頭が後続をどんどん引き離していく。勝負は早くもこの3頭に絞られた。 

次の歓声が起きたのは3~4コーナーでラムジェット三浦皇成騎手が手綱を押し始めたとき。どうした。反応が悪いのか。やはり前ヅケの戦法はラムジェットに合わなかったのか。どよめきにも似た歓声に悲鳴が交錯する。なにせ単勝1.7倍。しかも舞台はダービーである。

それでも前を捉えたラムジェットが直線で独走となった瞬間、この日一番の大歓声が競馬場を包み込んだ。後続をぐんぐん離すにつれ、歓客のヴォルテージもどんどん上がる。これは強い。「やっぱりJRAか……」。背後で誰かがそう呟く。新時代の東京ダービーは衝撃的な圧勝劇で新たな一歩を踏み出した。

ヒヤシンスSの勝ち時計1分36秒3は、その後に行われたフェブラリーSからコンマ6秒遅いだけ。良馬場で行われたヒヤシンスSの勝ち時計としては過去もっとも早い。だからラムジェットが傑出した能力の持ち主だということは最初から分かっていた。それでもダービーでは何が起こるかわからない。なぜか。それは他の15頭も勝つために死力を尽くすからである。我々はダービーでそういうシーンを幾度となく見てきた。

寒椿賞から手綱を取り続ける三浦皇成騎手は、勝つたびに距離は伸びた方が良いと言い続けていたはず。ラムジェットの祖母はマイルのスパーキングレディカップを3連覇したラヴェリータ。後続を5馬身突き放した関東オークスを筆頭に、宿敵ミラクルレジェンドを一蹴したエンプラス杯、56キロを背負って牡馬を一蹴したブリリアントSなど、2000mを超えるレースでも活躍した女傑である。ラムジェットにもその距離適性が受け継がれていることは間違いない。

レース後、陣営からは「来年はずっと米国」という展望が示された。米国の歴代名馬たちの名が散りばめられたその血統表を見れば、ラムジェットが米国で走ること自体に価値があろう。日本の砂の女王の孫が米国でどんな走りをするのか。今から楽しみだが、その前にフォーエバーヤングとの直接対決があることを忘れてはならない。この2頭の直接対決を日本で観ることができることに感謝しよう。決戦の三冠目は10月2日、水曜日の夜だ。

 

***** 2024/6/6 *****