いざ、チャーチルダウンズ

冬の東京開催最終日はダートチャンピオンを決める日であると同時に、次世代のダートチャンピオン候補を見定める日でもある。フェブラリーSと同じ東京ダートの1600m。「この中に来年のフェブラリーSに挑戦する一頭はいるのだろうか?」と将来を思い描きながら見る競馬が楽しくないわけがない。

2008年のヒヤシンスSを勝ったのは当時3歳のサクセスブロッケンである。その2レースあとに行われたフェブラリーSを勝ったのは、それが5つ目のGⅠ級タイトル獲得となる「砂の王者」ヴァーミリアンだった。

この時、サクセスブロッケンヴァーミリアンを破る存在になると予感した人は少なかったかもしれないが、決してゼロではあるまい。実は私はその一人。それほどサクセスブロッケンの強さは際立っていた。実際にその翌年のフェブラリーSは、サクセスブロッケンヴァーミリアンの連覇を阻んで優勝。ちょうど一年前、サクセスブロッケンの強さにある種の予感を抱いた人にとっては、忘れ得ぬレースとなったに違いない。

今年のヒヤシンスSを勝ったのはラムジェット。スタートで勢いがつかずに最後方からのレースを強いられながら、いざ直線に向くと大外一気の末脚で先行馬を捉え、さらに3馬身も突き放してみせたから凄い。これまで1400mばかり使われて、差し届いたり、届かなかったりの競馬が続いていたが、距離が伸びて真価発揮。ただ、サクセスブロッケンのヒヤシンスSは4馬身差だった。

それでもラムジェットの1分36秒3の勝ち時計は、その後に行われたフェブラリーSからコンマ6秒遅いだけ。良馬場で行われたヒヤシンスSの勝ち時計としては過去もっとも早い。

このレースぶりを見れば来年のフェブラリーSなどと言わず、ケンタッキーダービーに挑戦したくなる気持ちも分かる。陣営の発表は早かった。UAEダービーには向かわないというから、除外の可能性が無いわけではない。来月行われる伏流Sの勝ち馬が「出る」と言い出したら、優先権はそちらに移る。それも含めて覚悟の現れだと前向きに受け止めたい。

ケンタッキーダービーでも騎乗予定の三浦皇成騎手は距離は伸びた方が良いと断言した。ラムジェットの祖母はマイルのスパーキングレディカップを3連覇したラヴェリータだが、後続を5馬身突き放した関東オークスを筆頭に、宿敵ミラクルレジェンドを一蹴したエンプラス杯、56キロを背負って牡馬を一蹴したブリリアントSなど、2000mを超えるレースでも活躍した。ラムジェットにもその距離適性が受け継がれていると信じたい。

米国の歴代名馬たちが散りばめられた血統表を見れば、ラムジェットケンタッキーダービーを走ること自体に相当の価値がある。果たして日本の砂の女王の孫がチャーチルダウンズを駆けることはあるのか。楽しみに待ちたい。

 

***** 2024/2/21 *****