東京競馬場フジビュースタンド東側1階のフードエリアに「俺の生きる道」というラーメン店が一昨年にオープンしていたのだが、エプソムカップの当日にようやく食べる機会に恵まれた。
いわゆる「二郎インスパイア系」と言って良いのだろう。極太麺と豚骨しょうゆの濃厚スープ、山盛りの肉と野菜というインパクトたっぷりの一杯は、調理にも食べるのにもスピードを要求されるはずの競馬メシには不向きなのではないかと勝手に心配していたが、いつ見ても行列が絶えない。レースとレースの合間にサッと済ませる―――そんな昭和の競馬場の点景は消えつつある。
早食いが得意なはずの筆者でもこの一杯をサッと平らげるのは難しい。道悪で力のいる馬場に四苦八苦する馬の労苦が少し分かった気もする。
この「俺の生きる道」を経営者されているのは元横浜ベイスターズの小林公太さん。ご本人は文京区白山にあるお店で日々厨房に立っているというので、後日改めて訪れてみたのである。
豚ラーメンを注文。二郎よろしく、仕上げ前に野菜やアブラの追加ならびにニンニク投入の有無を聞かれる。いずれも必要なければ「そのまま」と言うのがルール。競馬ファンなら「そのまま!」と叫ぶことは慣れたものであろう。
大量の野菜の山を少しずつ崩すように片付け、分厚いチャーシューを噛み砕き、絡み合って思うように動かせぬ麺を力づくで引っ張り出す。「そのまま」にして正解だった。早食いで大食いを自認する私でも、これは手ごわい。でも旨い。
ところで、小林公太さんを知らない方でも、その奥様はご存じかもしれない。元女子野球選手で、今は茨城ゴールデンゴールズ監督を務められる片岡安祐美さん。最近では全府中女子野球チームとの合同チームを編成して、女子野球のヴィーナスリーグにも参加なさっている。
ちなみに全府中女子チームの愛称は「メアーズ」という。英語で「Mare」が牝馬を意味することは説明の必要もあるまい。もちろん地元の東京競馬場を意識したネーミング。先週日曜には、その東京競馬場からほど近い府中市民球場で試合に臨んだが4ー6で惜しくも敗れた。同じ日、京都ではメア限定の重賞レースが行われて、長島まなみ騎手が初めてのタイトルを獲得。先日の白山「俺の生きる道」でも女性の独り客が黙々と野菜と格闘していた。生きる道は人それぞれ。男も負けていられない。
***** 2024/6/23 *****