名牝とポニーに会いに

プロ野球交流戦もいよいよクライマックス。エスコンフィールド北海道で行われるファイターズvsジャイアンツの試合観戦のために北海道入りしたが、その前にノーザンホースパークである。千歳に降り立ったら、まずウインドインハーヘアに挨拶をするのが競馬ファンの礼儀であろう。

背中は落ちてはいるが、その足どりの力強さを見るに33歳とはとても思えぬ。この春は曾孫が桜花賞を勝った。牝系の枝葉はますます広がる。種牡馬を通じてもキズナキタサンブラックの産駒が大活躍。あのイクイノックスの血統表にも登場するとなれば、ウインドインハーヘアの名前がない馬を探す方が難しくなる日も近いのではないか。

ビッグママに別れを告げて、今度はハッピーポニーショーを見物。

最初の印象は「可愛い」である。だが、そのうち「ほお」と声を上げるようになり、それが瞬く間に「凄い!」と拍手を送るに至る。これは観て損はない。

興味の的はやはりその調教方法に向く。一般に大きい馬は気性が穏やかとされ、小さくなるにつれ気性が荒くなり、扱いも難しくなる。サラブレッドに子供が指を噛まれたという話はあまり聞かないが、ポニーに噛まれたと言う話は珍しくない。それなのに、目の前のポニーは手綱や長鞭もなしに、お姉さんの言うことを聞いてお客に愛想を振りまいているではないか。

この日、ショーに登場したのは14歳のスーちゃん。お披露目する芸の内容を書いてしまうとネタばれになるので、そこは現地で見ていただきたい。スタッフの軽快な口調や、テンポの良い進行などは、人気水族館のイルカショーに通じるものがある。思っていた以上の完成度。さほど期待していなかった自らの見識を恥じねばなるまい。

最近ではパーク内で過ごすポニーの頭数も増えた。吉田勝己さんの肝入りとのことで、運が良ければ目を細めてポニーショーを眺める勝己氏の姿を見ることもできる。かつてはノーザンホースパークの公式ツイッターにポニーと戯れる角居元調教師の姿もアップされていた。角居さんもポニーショーを楽しみに来場されていたという。日本を代表する2人のホースマンが、いかにウマという生き物を愛してやまないのか。これ以上、それを端的に表している事例はあるまい。

ポニーショーが行われる会場「パラッツォ・ベガ・ポニー館」は、以前はゲーム機や卓球台が並ぶ休憩用のスペースで、一部に競馬の優勝カップなどが展示してあることを除けば、取り立てて足を踏み入れるようなエリアではなかった。現在は、1階がポニーショーのアリーナとして使われ、2階は馬の資料館「ノーザンホースミュージアム」に生まれ変わっている。馬に関する素朴な疑問に答えるパネルや、毛並みの手入れに使うブラシや蹄鉄などを展示、子供たちが手に触れて楽しめる内容になっている。

「これこそ真のホースパークの姿だよなぁ」

競技馬場での練習風景を観ながら独り言ちてたら、とつぜん勝己さんが隣にやってきてひっくり返った。たしか今日は社台グループ会員向けの牧場見学ツアーのはず。まさかこんなところにふらりと現れるとは、油断の謗りは免れまい。あたふたしながら挨拶をして、逃げるようにその場を離れた。では、これより北広島・エスコンフィールド北海道へと向かう。

 

***** 2024/6/14 *****