先週土曜の東京11レースに出走したアサマノイタズラタと京都10レースに出走したモカフラワーは、ともに母がハイタッチクイーンだから兄妹ということになる。西と東に分かれてレースに臨んだが、結果は16着と7着。兄妹が揃って同時に勝つのは、やはり簡単なことではない。
きょうだいが同じレースで走ることもある。GⅠ級では2001年の中山大障害に同じユウミロクを母に持つユウフヨウホウとゴーカイが揃って出走。ワンツーフィニッシュという快挙まで為した。ワンツーとまではいかずとも、10年の有馬記念でルーラーシップとフォゲッタブル(母・エアグルーヴ)、12年のJCダートでミラクルレジェンドとローマンレジェンド(母・パーソナルレジェンド)など、数年に一度程度の割合で兄弟対決が実現している。だがクラシックレースでとなると過去に例がない。
なぜか。当たり前の話だが、クラシックは同一世代によるレースだから。競走馬でも双子が生まれる可能性が捨てきれない以上、100%有り得ないとも言い切れないが、クラシックレースでの兄弟対決が実現することはほとんどない。
それでも従兄弟なら同い年になることが有り得る。私が競馬を始めてからの過去45年間で、従兄弟同士の間柄にある2頭がダービーの出馬表に名を連ねたケースは、都合4回あったと記憶する。
1984年 祖母:スズキール
スズマッハ 2着
スズパレード 4着
1997年 祖母:ピーチガール
シルクジャスティス 2着
シルクライトニング 除外
2012年 祖母:クラフテイワイフ
トーセンホマレボシ 3着
ヒストリカル 18着
2015年 祖母:エアグルーヴ
ドゥラメンテ 1着
ポルトドートウィユ 12着
注目すべきは、いずれのケースでもどちらかが馬券に絡んでいることであろう。さらにケンタッキーダービーでも、フォーエバーヤングとシエラレオーネの従兄弟が揃って馬券圏内に飛び込んだ。そして今年のダービーには、共に祖母にランズエッジを持つアーバンシックとレガレイラのイトコ同士が参戦。この二頭ならばワンツーフィニッシュも夢ではあるまい。
ランズエッジの母はウインドインハーヘア。言うまでもなくディープインパクトやブラックタイドのお母さんだ。ウマの世界では父系をくぐる親子関係を親類扱いしないが、仮にヒトと同じように考えるなら、今年の日本ダービー出走18頭のうち、レガレイラ、ジューンテイク、コスモキュランダ、アーバンシック、サンライズジパング、シックスペンス、コンバデカーブース、ジャスティンミラノ、ショウナンラプンタ、エコロヴァルツの10頭は、みなウインドインハーヘアの「曾孫」ということになる。
一頭の牝馬がここまで影響力を及ぼすダービーというものを筆者は過去に知らない。そもそも今年の桜花賞馬ステレンボッシュにしてもアーバンシック、レガレイラの従妹なのだから、その祖母ランズエッジは凄い。その母ウインドインハーヘアはもっとすごい。この牝系はますます枝葉を広げるはずだ。
今年33歳になったウインドインハーヘアは曾孫たちの活躍をどう見ているのだろうか。ディープインパクト一頭に留まらぬ強烈なインパクトを日本競馬史に与えた歴史的名牝は、今日もノーザンホースパークでポニーたちと一緒にのんびり余生を過ごしている。
***** 2024/5/23 *****