小倉のカレー

6月も今日で終わり。2024年も半分が過ぎたことになる。早いですね。

ともあれ7月の声を聞けば本格的な夏も近い。ハウス食品によると、7月と8月はカレールーの売上がほかの季節と比べて1割以上増えるそうだ。スパイスに食欲を増進させる効果があることはわかるが、夏にカレーが好まれる理由はきっとそれだけではあるまい。とくに激辛が好まれることを考えると、汗だくになりながら食べた後にやってくるなんとも言えない爽快感が病みつきになるせいではあるまいか。

大井競馬場Lウイング1階「アジアバル001」では、店自慢のモツ煮を惜しげもなく投入した「モツ煮カレーライス」が人気を集めている。モツはもちろんのこと、欧風に仕立てられたカレーがなかなか美味い。こういうカレーによくありがたちなのが「懐かしのカレー」という触れ込みだが、しょっちゅう食べるもので、そのたびに懐かしがるわけにもいかんでしょ。そういう意味では、こちらは純粋なカレーの美味しさで勝負しているところに好感が持てる。

競馬場のカレーと言えば、阪神競馬場スタンド6階売店の「ぼっかけカレー」も捨てがたい。

ぼっかけとは牛スジとこんにゃくを甘辛く炊いたものの俗称。関西名物のお好み焼きや焼きそばの具として使われることが多いのだが、カレーの具材としてはあまり見ることはなかった。食べてみると、カレーの辛さとぼっかけの甘さが絶妙なコントラストを描いてなるほど美味い。そもそも牛スジはカレーに合うのだし、時折感じるクニャっとしたこんにゃくの歯ざわりは、食べるものを飽きさせぬ重要な役割を演じている。阪神競馬場スタンド改修後には、階下のフードコートでも発売されることを切に願う。

先日の小倉ではスタンド1階「ボントン」のカレーを食べた。松本清張ゆかりの一軒である。と言っても、清張が競馬場に通っていたわけではない。この店はもともと小倉の市街地でレストランを営んでいた。そこの常連客のひとりが、当時朝日新聞西部本社に勤めていた清張だったのである。

レストランは清張が亡くなった翌年の1993年に閉店。だが99年、小倉競馬場の新装オープンに合わせ、オーナーのご子息が老舗の屋号をを受け継ぎ、現在はカレーライス一筋で頑張っているという。ちなみに清張はレストランではカレーライスを注文することはなく、もっぱらステーキばかり食べていたそうだ。

現在、小倉競馬場内「ボントン」のメニューはビーフカレーとカツカレーの2種類のみ。それでも客足が絶えることはない。昼休みは大行列だった。夏の開催を待ちわびていた客の中には、競馬だけでなくこのカレーを楽しみにしていた客もいたようだ。そのコク深い欧風カレーの味が、夏バテというよりも前夜の中州ハシゴで疲弊した胃腸を優しく回復してくれる。やはり夏はカレーだ。

 

***** 2024/6/30 *****