【太麺礼讃③】小樽ニュー三幸のスパカツ

今日のお昼はミートソーススパゲティー。しかし普通のミートソースとは見た目が異なる。太麺のパスタの上には厚切りのトンカツがドンと鎮座。その上からミートソースがたっぷりかけられたビジュアルから伝わるボリューム感は圧倒的だ。それがステーキなどに使うアツアツの鉄皿に載せられて運ばれてきた。皿から立ち上がる湯気とジュージューという音が食欲をそそる。

これは釧路のB級グルメとして有名なスパカツ。しかし、私がいるのは釧路ではない。新千歳空港3階の「小樽ニュー三幸」というビアレストラン。初めて入った。台風10号から逃れるように昼前の便で羽田を出発。無事に千歳に降り立ったは良いが、約束の時間にはまだ早い。台風によるトラブルが怖くて3時間もフライトを早めてしまったのである。空港でゆっくりするタイプではないが、こういう機会でもなければこの店に入ることも、スパカツを食べることもなかったかもしれない。これこれでヨシであろう。

トンカツはロース肉にひき肉を挟んで揚げてある。サクッとした歯応えながら噛めばジュワッと柔らかい。それに合わせるのはトンカツソースではなく甘めに味付けされたミートソース。肉を肉のソースで食べるというのは不思議な感覚だが、これがなぜか合う。極太のパスタは絶妙なアルデンテ。鉄板の熱と油で素揚げ状態になった麺のカリカリとした歯応えがまた楽しい。最後までヤケドに気を付けなければならないほどアツアツのままだ。

こちらのお店では「小樽あんかけ焼きそば」も人気と聞いた。そこは小樽を名乗るビアレストランである。客は様々な具材をアテに生ビールを煽り、シメにまだまだ温かい焼きそばをすするらしい。

あんかけ焼きそばもスパカツも最後までアツアツで食べられる料理という点で共通している。その文化が育まれた小樽や釧路が同じ港町であることは偶然ではあるまい。冬の寒さは我々の想像の上を行く。仕事から帰った漁師さんが、身体が温まってなおかつボリュームのあるものを食べたいと思えば、自然とこういうメニューになるに違いない。「温かさ自体がご馳走」。北国の港町ならではの食文化と言えよう。

しかし食べ進めるにつれて、そんな北国ならではの食文化説に一石を投じたくなってきた。ステーキやハンバーグの付け添えに、ちょっとしたナポリタンが付いてくることがある。ジュージューと音を立てている鉄板に載せられ、美味しい肉の脂を吸ったあのナポリタンの味を知っていれば、「ナポリタンそのものを鉄板で出してトンカツを載せたら美味いんじゃないの」と気づきそうなもの。実際にはそういう側面があったとしても不思議ではない。要は美味ければそれで良いのである。

さて、約束の時間には多少早いが、これよりエスコンフィールドに向かう。今夜はナイターで楽天イーグルスの試合を観たのちに札幌入りの予定。しかし台風10号も着実に北海道に向かっている。千歳に着いただけで安心するのは、まだ早そうだ。

 

***** 2024/8/28 *****