続・神様お願い

1月7日付「神様お願い」に書いた湯島天神への緊急参拝をようやく果たした。あれから12日も経っていればもはや「緊急」とは呼べぬが、これで菅原道真公にもお許しいただけるだろうか。結果はAJCCの馬券成績で明らかになろう。

早くも梅がほころぶ境内をあとにして歩くこと5分。「二代目甚八」という屋号のうどん屋さんに入った。看板には「東京伊勢うどん」とある。

伊勢うどんと言えば、極太ながらクタクタの軟らかさになるまで茹で込まれた麺に、独特の甘辛いタレを混ぜて食べるスタイルで有名。その軟らかさになるまで本場伊勢では1時間かけて茹でる店もあると聞く。しかしこちらの麺はいたって普通の麺だった。コシが弱めの讃岐と言っても良い。このあたりが看板に敢えて「東京」と謳った差別化だろうか。それでも黒いタレは本場伊勢と変わらない。ズズーっと啜ると口の中に甘辛い余韻を残しつつ、麺が喉を通過していった。

そもそも伊勢うどんは遠方から参拝のためにやっていた旅行者向きのメニューである。疲れた身体に軟らかい麺は消化が良く、甘みは疲れを取り、汁もないから食べやすい。参拝直後の私が食べるのは理に適っている―――。が、いかんせん量が足りない。大盛にすれば良かったと後悔しつつ、さらに歩くこと2分。「まるしょう」の暖簾をくぐった。

珍しい焼きそば専門店である。使っているのはもちろん自家製麺。驚くのはその麺の太さ。ほぼうどんと言っていい。聞けば実際にうどん用のサイズの刃で切り出されているとのこと。実際断面は四角形で、しっかりエッジも立っている。生麺を大釜で5分ほど茹で、それを冷水で締めてから使うあたりもうどんと変わらない。その麺はモチモチとしていながら、その太さゆえに啜る喉越しも爽快で、ほどよく焼けた香ばしさの向こうから全粒粉の豊かな香りが立ち上ってくる。

しかし実際に食べている感覚としては、焼きそばではなく、かといって焼きうどんでもなく、敢えて喩えるならばロメスパに近い。だからこんなメニューが登場するのも頷ける。ずばり、ナポリタンだ。

ビジュアルはスパゲティ・ナポリタンとなんら変わり無い。しかも、食べてみると完全にスパゲティ・ナポリタンを超えてくる。焼きそばだからズズーっと音を立てて啜るのも当然アリ。箸を使って食べるスタイルも焼きそばなら当然。100%自家製だというトマトケチャップのアシストも秀逸だが、やはり何といっても麺が美味い。

「麺を食わせる」は讃岐うどんのポリシーと同じ。味付けだってソースに固執する必要はない。焼きそばの具がキャベツと豚肉だなんていったい誰が決めたんだ? 伊勢うどんの麺の硬さだってもっと自由で良いはず。そういう発想がなければ新たな定番は生まれない。平安の改革者だった菅原道真公もきっと同じ思いであろう。

 

***** 2024/1/19 *****