切り札登場

「接戦」が報じられていた米大統領選挙だったが、いざフタを明けてみればトランプ前大統領の圧勝だった。

僅差の争いなので票の数え直しや法廷闘争になることもあり得る。場合によっては4年前のような暴動が起きるかもしれない。いずれにせよ勝者が決まるまでは相当の紆余曲折があるだろう―――。これが大方のメディアの予測だったはず。しかし投票翌日にはトランプ氏が早々と勝利宣言。さらにその翌日にはハリス氏があっさりと白旗を上げて、実にあっさりと勝敗が決した。

「実力伯仲の大混戦。人気薄の台頭も十分あり得る」というメディアの見立てに踊らされ、ベタベタと穴馬券を買い込んだら、結局1、2番人気の堅い決着に収まった―――。今回の大統領選を馬券的に見れば、初めからそんな流れだったように思えてならない。こういうときの1、2番人気の配当は意外とつくことも我々は経験的に知っている。

自民党の総裁選にせよ、総選挙における国民民主の躍進にせよ、最近続いた大型選挙におけるメディアの見立てはことごとくハズれた。予測したのはその道のプロのはず。それでも投票ごとを読み切るのは難しい。次回の選挙から「予測」の言葉は使わずに、競馬と同じく「予想」としてはどうか。アナリストも「予想屋」を名乗ればいい。それならハズれても誰も文句は言わない

ともあれトランプ大統領の再登板が本決まりになった。日本で「トランプ」と呼ばれるカードゲームは、英語では「プレイング・カード」、あるい単に「カード」と呼ばれる。「トランプ」とは本来「切り札」の意。日本に伝わった際、ゲームの中で外国人が切り札の意味で発した「トランプ」という言葉を、カードそのもののことだと誤解したのが間違いの始まり。結局そのまま日本語に定着してしまった。果たしてトランプ大統領は米国の切り札たり得るか。

折しも今週はエリザベス女王杯が行われる。その切り札は馬番⑫番の馬ではあるまいか。なぜか、「トランプ」で「女王」と言えば「12」のカードをおいてほかにあるまい。

そう思いつつ確定枠順を見れば、⑫番枠を引き当てたのはシンティレーションではないか。手綱を取るのは英国人ジョッキーのトム・マーカンド騎手。2020年の豪GⅠクイーンエリザベスSを皮切りに「クイーンエリザベス」の名を戴くGⅠレースを4年連続で勝ち続けている名手ならば、5年連続の戴冠さえも期待できよう。レーベンスティールやジャスティンミラノに初勝利をもたらし、ステレンボッシュ赤松賞を勝ったその腕に敬意を表したい。エリザベス女王杯の切り札は彼だ。

2022年12月10日 中山4レース レーベンスティール T・マーカンド

 

***** 2024/11/8 *****