放馬から栄光

有馬記念の興奮覚めやらぬ中ではあるが、南関東でも2024年を締めくくるレースが目白押し。明日の浦和では古馬短距離路線を締め括るゴールドカップが行われる。3連覇がかかるスマイルウィは、昨年のこのレースで単勝配当130円を記録した。ゴールドCが年末に行われるようになってからの、これが単勝最低配当記録。今年はそれを更新する可能性が高い。

実はもっと人気を集めかけた馬も過去にはいる。それが2015年のソルテ。5歳シーズンのこの年、川崎マイラーズ、京成杯グランドマイラーズ、サンタアニタT、マイルグランプリと重賞4連勝中だった。その4レースの着差合計は19馬身。すべて圧勝である。このゴールドCでも負ける要素は見つからず、パドック周回時の単勝オッズは1.1倍を指していた。

ところが本馬場入場時に事態は一変する。悲鳴のような歓声を耳にして馬場に目をやると、空馬になったソルテが爆走しているではないか。その彼方には茫然と立ちすくむ吉原寛人騎手の姿が! これは一大事だ。

もし圧倒的1番人気の馬が競走除外ということになれば、その影響は計り知れない。大半の人はソルテ絡みの馬券を買っているのである。浦和の2015年を締め括る大一番が、ただ見るだけで終わってしまってはあまりに切ない。

とはいえ、何事もなかったように出走して、万一負けたら何が起こるか分かったものではない。なにせここは浦和である。少なくとも吉原騎手は無事では帰れまい―――。なんて話は冗談だが、少なくとも吉原寛人騎手本人は内心ヤバいと思っていたことだろう。騎手が平常心を失えば、それだけで余計な負担重量を背負ったことになる。

果たしてソルテはそのまま出走することに。それで結果は5馬身差の圧勝だから凄い。この勢いを駆って、翌年はフジノウェーブ記念とさきたま杯を制覇。かしわ記念でも2着と好走し、見事NAR年度代表馬に輝いている。

2015年 ゴールドC ソルテ 吉原寛人

ただゴールドCのソルテ単勝払戻金は、終わってみれば150円だった。放馬してから締切までの10分間余りで暴落したのである。まあ、そりゃあそうですよね。放馬前に単勝につぎ込んでいた人は、この結果に安堵したことだろう。しかし、いちばんホッとしたのは吉原騎手本人に違いない。その吉原騎手は明日のゴールドCでエンテレケイアに騎乗する。落ちないよう注意してほしい。

 

***** 2024/12/23 *****