昨日の話。今年からJpnⅠ(以下「GⅠ」)に昇格した「さきたま杯」には4頭ものGⅠウイナーが集結する豪華メンバーとなったが、中でも実績で頭ひとつ抜けているレモンポップが2馬身差で完勝した。2着イグナイター、3着シャマルとGⅠ馬が上位を占めた結果はレースレベルの高さを物語っている。入場者数も売り上げも前年を大きく上回った。主催者は胸を撫でおろしていることだろう。
とはいえレモンポップにだって不安がなかったわけではない。前走のサウジカップは12着大敗。さらに初めての浦和コース。普通に考えればこれで単勝1.2倍は危ない。
しかし初コースの不安は最高のスタートを決めた時点であっさりクリアした。大敗後の立て直しが田中博康厩舎の十八番であることは、エプソムカップのレーベンスティールで既に明らかになっている。それで前年の覇者イグナイターに馬体を並べることすら許さなかった。浦和競馬場に詰めかけた大観衆の声援が後押しになったとしか思えぬ。西日を背に浴びながら、4コーナーをレモンポップが先頭で回ったときのファンのヴォルテージは、まさにGⅠのそれだった。
さきたま杯にGⅠホースが参戦することは過去に無かったわけではない。テスタマッタ(2013年)やノボトゥルー(2003年)のように勝った例もある。ただ、モーニン、ベストウォーリア、スーニのようにGⅠの看板を背負って負けていった馬の印象が強い。GⅠになる前は別定重量だから、GⅠ馬は余計に背負う宿命にある。
2008年には前年のJBCスプリントの覇者フジノウェーブが出走。59キロを背負って5着と敗れた。手綱を取っていた当時の坂井英光騎手(現調教師)。言うまでもなく坂井瑠星騎手のお父さんである。英光騎手は2011年のこのレースでもジーエスライカーの手綱を取って惜しい2着と敗れた。今回の結果をいちばん喜んでいるのは、ひょっとしたら英光調教師かもしれない。
***** 2024/6/20 *****