ミタか、サンダか

三田。

この地名の読み方で関東人か関西人かを判断することができる。関東人の筆者は当然「ミタ」だった。港区のミタ。地下鉄三田線のミタ。三田製麺所のミタである。しかし、関西に3年間住んだだけで、すっかり「サンダ」に脳が染まってしまったように思えてならない。関西おそるべしである。兵庫県三田市のサンダ。三田マラソンのサンダ。阪神競馬場で行われる三田特別もサンダだ。東京に戻った今も、つい「サンダ駅で待ち合わせ」なんて口走ってしまいそうで怖い。

2021年 三田特別 ヴェローチェオロ(M・デムーロ

ともあれ今日は三田で日中を過ごした。もちろん「ミタ」の方。

私が東京を留守にしている間にオープンしたうどん屋さんを巡っておきたい。まず手始めにその名の通り「はじめ製麺」へ。居酒屋チェーンがランチタイム限定で暖簾を替えて武蔵野うどんを出しているらしい。これはミタを実感するに相応しい一杯と言えよう。うどん文化の関西とはいえ、武蔵野うどんにお目にかかることはなかった。

ややもすれば硬いとさえ感じる極太の麺を、豚肉の浮いたつけ汁に絡めてワシワシと食べるのが武蔵野うどんのスタイル。しかし、こちらのお店の麺は思いのほか平べったい。つゆの絡みやすさを考えてのことか、あるいは単に茹で時間短縮のためか。結果的に武蔵野うどんの醍醐味たるワシワシ感が低減した感は否めない。それでも居酒屋チェーンでここまでやっているのなら、その心意気を含めて合格点をあげよう。

「はじめ製麺」から歩いて1分もかからぬ距離に、もう一軒の未訪問店「うどん讃香」が暖簾を掲げている。その名から分かるように讃岐うどんのお店。心はミタからサンダを超えて、一気に高松へと飛んだ。

鶏天うどんを注文。いりこの香りが漂う透き通ったダシは、まさに讃岐の一杯である。麺も美味しいが、なにより鶏天が美味い。2個だけでは正直足りぬ。こちらのお店も夜はお酒の楽しめるスタイルで営業しているらしい。うどんよりむしろそちらの方で人気の一軒とのこと。この鶏天を食べれば、さもありなんと思う。

ちなみに、この「うどん讃香」の目と鼻の先には、つけ麺で有名な「三田製麺所」の本店がある。関西にも広く進出している人気店だが、彼の地では「サンダセイメンジョ」と呼ぶ人も少なくなかった。もちろん「ミタセイメンジョ」が正しい。ただ、美味しければどちらでも良いのかもしれない。

2023年 三田特別 イヤサカ(酒井学

 

***** 2024/1/22 *****