出るか、バレンタイン馬券

こう話すとたいていの相手は意外だという顔をするのだが、実はチョコレートを大の苦手としている。

アレルギーが出るとか、幼少時にチョコレートにいじめられたトラウマを持つととか、そんな明確な理由はない。ただ味が嫌いなだけ。体型の割に血糖値が低いことでは助かっているが、見かけがデブというだけで「甘いもの好きでしょう」とチョコレートを出されたりするので、どちらかと言えば困ることの方が多い。若い頃はバレンタインデーに持ちきれないほどのチョコレートをもらって死ぬほど困った……なんて経験をすることが全くなかったことは、不幸中の幸いであろう。

明日はバレンタインデーである。

だが最近のバレンタインデーは私が学生の当時とは趣が多少異なるらしい。自分へのご褒美として、高級チョコを買って自分で食べる女性が増えているのだという。かくいう我が家の二人の娘は「友チョコ」と称して女友達同士でチョコを交換するのだと手作りチョコの作成に余念がない。そもそも私が学生の当時は「義理チョコ」さえも存在していなかったはず。イベント好きで、外国の風習を日本風にアレンジして楽しむ日本人の国民性と言えばそれまでだが、ここまで好き勝手にされては聖人バレンチヌスも黙ってはいまい。一時的とはいえ、バレンタインステークスが姿を消したのも無理からぬ話だ。

バレンタインSは冬の東京開催の名物レース。過去の優勝馬にはサイレンススズカオフサイドトラップといったGⅠ馬が名を連ねる。出走馬の馬場入場時に「バレンタイン・キッス」や「チョコレイト・ディスコ」が流れることでも知られた。2010年を最後に番組表からいったん姿を消していたが、17年にダートのオープン特別として復活。おとといの東京10レースでも馬場入場時に国生さゆりさんの歌声が流れた。

今年のバレンタインSに出走したザイツィンガーはホワイトチョコを思わせる馬体。そのお母さんザッハトルテの名はオーストリア発祥のチョコレートケーキに由来する。ならば馬券もこの馬からとばかりに単複馬連を買い込んだが、9歳馬レッドヴェイロンの鬼脚に屈した。この日は2月11日。バレンタインデーにはまだ早いということか。ちなみにレッドヴェイロンの吉田豊騎手はこれが3度目のバレンタインS制覇となる。

今日は大井2レースをダリオールショコラ(木間塚龍馬)で、さらに4レースではグレイスショコラ(矢野貴之)で勝負に出るも、それぞれ11着と9着に終わった。それでもポンコツ馬券師はバレンタイン馬券を諦めようとはしない。なにせバレンタインは明日が本番。ゴディバ夫人も驚くバレンタイン馬券が炸裂するに違いない。明日の大井3レースに藤田凌騎手で出走するザゴートの母は、その名もエルメスショコラだ。

 

***** 2024/2/13 *****