引率者の嘆き

大井は開催の4日目。まもなく1レースの発走を迎えるが、スタンドの人影はまばらだ。重賞もない平日ではそれも仕方あるまい。

なぜそんな日に早くから来ているのか。実はちょっとしたイベントごとである。競馬に関係も興味もない人を交えて、大井で馬券勝負を楽しもうという企画。スタンド上階の立派な部屋を遣わせていただいているが、TCKオフィシャルではない。そこで参加者の中でもとりわけ関係も興味も深い私が、成り行きで引率者兼馬券アドバイザーを引き受けることとなった。まあ、そういう意味では忙しい。

パドック周回開始から騎乗命令、本馬場入場、かえし馬、馬券発売締め切り、発走、ゴールというひと通りの流れを説明した上で、新聞の見方、着差、馬体重、枠番と馬番、斤量、騎手とその服色といった基本事項をレクチャーし、ちょっと上級者にはクラス分けとか砂の状態とかクロい話もする。さらにビールはここで買えて、フレンチトーストなんつーのもあったりしますが、せっかくなのでモツ煮丼というのもこの機会に是非ご賞味ください……という具合にとにかく休む暇もない。

ひと息ついたところで、ようやく自分の馬券を買うわけだが、ここに最大の試練が待ち受けている。知った顔してあれこれレクチャーしている以上、ある程度は当てなければ体面を保てない。だが、私の馬券下手は知る人ぞ知る。馬券に必要不可欠な「運」も持ち合わせてない。ともあれ知識と馬券の巧拙は別物である。むしろ知識が的中を遠ざけることもあろう。だって、4レースを勝ったジャストリアンなんて成績見たらとても買えませんよ。5秒8離された圧倒的しんがり負けから巻き返して勝つなんて考えられないでしょう。でも、ここに連れてきた人たちにそんなことを訴えたところで理解してはもらえまい。

結果を書けば今日の馬券は散々だった。セコく当てに行けば穴馬の激走に会い、一発逆転を狙ってフルスイングしても、バットは空を切るばかり。レースが終わってから、なんでこんな馬券買ったんだろ?と思うようなハズレ馬券が、どんどんたまっていく。

良いところを見せようと張り切ってもロクな結果にはならない。武豊騎手を見ていれば分かる。彼はどのレースでも、どんな人気の馬に乗っても、常に自然体を貫いている。余計な力みがない。だから武豊は凄い。

ブラックストームが内から鋭く差し切って連覇を果たしたジュライ賞を見届けたのち、大井町の中華料理店でささやかな打ち上げ。驚くことに私を除く参加者全員が、少なくとも1回は馬券を的中させていた。全敗は引率者たる私だけ。それが打ち上げでの話のネタにもなる。これ以上、参加者を楽しませるコンダクターもそうはいまい。彼ら彼女らのうち、一人でもリピーターになってくれれば、この手のイベントとしては御の字であろう。この店の飲食代を、そのまま大井競馬場に請求してやりたいくらいだ。

 

***** 2024/7/11 *****