羽田空港第3ターミナルのANAラウンジでこのテキストを打っている。目的地ヒューストンまでのフライトは12時間。朝の便では飛び立ってすぐ眠ることも難しい。その先に待ち受ける時差ボケを想像するだに恐ろしいが、とりあえず今は朝メシに集中。寿司、おにぎり、カレー、ラーメンを中心にひたすら腹に詰める。わけてもANAのカレーは絶品。タダだと思えばなお美味い。
しばらく口にすることができぬであろう日本食の名残を惜しむ―――と言うよりは、金額を気にせずモノを食べられることへの名残を惜しんだと言った方が近い。なにせ米国ではあらゆる物価が高騰中。折からの円安も手伝って、日本の2~3倍の食費を覚悟しなければならないという。
先ほど両替所で現金を20ドルだけ仕入れてきた。現金は使わないと聞かされてきたが、それでもどこでチップが必要になるか分からない。レートは1ドル=153円ちょい。高いですね。10年前は100円の大台を割ったり乗せたりで推移していた。わずか20ドルの両替なのに1000円損した気持ちでいっぱいになる。その損を補填したいという思いが、ラウンジでの爆食につながっているのであろう。20ドル程度で我ながら情けない。だがこれが億単位の金額となると、為替相場の影響は甚大だ。
豚骨ラーメンをすすりながら考えた。ジェンティルドンナが連覇を果たした2013年のジャパンカップの1着賞金は2億5000万円だったが、あれから10年を経て昨年は5億円に倍増している。しかしその間、為替は1ドル100円から150円に推移した。つまりドル換算では250万ドルから333万ドルへの増額にということになる。倍増どころか米国馬にすれば三割マシに過ぎない。
円安は対ドルだけではないから欧州馬にとっても同じようなものであろう。ジャパンカップに出走する外国馬が減り、国内のGⅠを捨てて海外に出ていく日本馬が後を絶たないのも頷ける。しかしこればかりはJRAでもどうにもできない。
億単位の考え事をしたおかげで、私の食事代など大したことないと思えるようになった。ラウンジの食事も満喫。これなら乗り継ぎ時間を含めれば17時間を超える長旅も耐えられるに違いない。ではこれより機中の人となる。
***** 2024/3/11 *****