長距離の遺伝子

関東の競馬はいよいよ暮れの中山開催に移る。明日のメインは師走の名物重賞・ステイヤーズS。関東のベテラン横山典弘騎手は、このレースが1997年にGⅡに昇格以降12回騎乗して(6,2,1,3)。複勝率7割5分だから凄い。

Nori

俗に「長距離は騎手で買え」と言われる。「馬7:人3」とされる力量の比率が、「人4」あるいは「人5」にもなるという教えであろう。折り合い、駆け引き、ペース判断、そして仕掛けのタイミング。とかく長距離戦は騎手の技量差が出やすい。

なかでも大事なカギを握るのはペース判断。だが、天皇賞(春)の3分15秒やステイヤーズSの3分45秒をピタリと計れるか? そう質問されて「できる」と答える騎手などほとんどいない。では、実際のレースではどうしているのか?

「ノリさんのポジションで判断します」

「ユタカさんに付いていくだけだよ」

ペース判断に長けた騎手はごく一握り。横山典騎手と武豊騎手が東西の双璧だ。彼らの位置取りを見ながら、他の大半の騎手はペースを知る。ゆえに、この二人が不在の長距離戦は乱ペースによる紛れが生じることも。ヒシミラクルが勝った菊花賞などはその典型であろう。

なかでも菊花賞セイウンスカイでの逃げ切り、天皇賞・春イングランディーレでの独走など、横山典騎手にしかできないペースを生み出すことは少なくない。負けはしたものの2006年のアドマイヤジャパン菊花賞などは、その最たる例ではあるまいか。禁忌とされる坂での仕掛け。それがあわやのシーンを演出し、結果的にディープインパクトの三冠達成がより衝撃的なものとなった。興醒めのスローペースでレースの評価を下げたりはしない。

しかし明日の横山典騎手は阪神で騎乗。ならば横山武史騎手に期待してみるのはどうだろうか。明日はマイネルウィルトスに騎乗予定。なにせ記念すべき第1回のステイヤーズSを勝ったのは誰あろう横山富雄騎手。典弘騎手のお父さんであり、武史騎手にとってはお祖父さんにあたる。騎手に長距離血統があってもおかしくはない。

 

 

***** 2023/12/1 *****