2023年の大トリ

12月29日からの3日間は東京大賞典東京シンデレラマイル東京2歳優駿牝馬を撮り、紅白を視ながら年越しそばを食べる―――。かれこれ20年続く私の暮れの過ごし方。齢を重ねて頑固さが増すことで、こうしたルーチンがより変え難い「決まり」になってくる。大阪転居で変わるかと思えたこの3年間も、暮れの3日間はちゃんと園田競馬場で過ごした。園田ジュニアグランプリを見届けて、自宅で紅白歌合戦を観ないと年を越した気がしない……はずだった。

その重い重いルーチンを今年はアッサリ捨ててしまったのである。写真を撮る必要がなくなったせいもあるが、それでも競馬場には行けたはず。寒いのは嫌。人込みも嫌。齢を重ねると頑固にもなるが、それ以上に面倒に勝てなくなる。結局は面倒くさい。

それでもせめて大みそかだけは「決まり」を守ろうと大井にやってきた。偉い。誰も褒めてくれないから自分で褒めることにする。

昼前にひと雨あった。それがやんだら今度は北風が吹いて寒い。しかし、ありがたいことに今日は客なのでガラス張りのLウイング4階でぬくぬくと競馬を観る。これを「堕落」と罵るのは勝手。自分自身には「卒業」と言い聞かせることにした。しかし馬券は一向に当たる気配がない。競馬の神様は「堕落」と判定したようだ。

南関東の多くの競馬ガチ勢にとって、一年のトリを飾るのは有馬記念でなければ、ホープフルSでもない。意外なことに東京大賞典でもなく、実は東京2歳優駿牝馬である。

東京2歳優駿牝馬を勝ったローリエフレイバー

「トリ」の正式な表記は「取り」。あて字で「主任」とも書くことも。本来の意味は「寄席で最後に出演すること、またその人」で、「真打ち」の俗称でもある。かつて寄席の木戸銭は興行主と真打ちで分けて取っていたという。だから「取り」。仮に不入りなら、真打ちが自腹を切って出演者に取り分を回すことで「面倒も取った」のだという。

トリと言えばNHK紅白歌合戦。紅組はMISIAさんが、白組は福山雅治がトリを務めた。紅白の対戦形式だから、男性と女性それぞれにトリがいる。いずれかのトリがいちばん最後に歌う「大トリ」を務めなければならないが、NHKによればトリや大トリを選ぶ特別の基準があるわけではなく、その年の演出の中で決まっていくとのことらしい。

そういう意味では重賞レースのトリは東京2歳優駿牝馬だが、一般レースも含めれば最終12レースが大トリだ。その名も「おおとり賞」。数年前のこのレースの騎乗を終えた戸崎圭太騎手が、装鞍所で「よし!今年も無事終わった」と言って大きく息をついたシーンが忘れられない。今年も同じようなシーンが繰り広げられているのだろうか。ガラスに囲まれたスタンドからでは知り得ないことを少しばかり残念にも思いつつ、2023年が静かに暮れていく。

それでは皆様、よいお年をお迎えください。

 

 

***** 2023/12/31 *****