今週の中山メイン京成杯はもともと3歳マイル重賞だった。重賞体系の見直しに伴い皐月賞と同じ土俵に設定されたのが1999年のこと。その年の優勝馬オースミブライトが、いきなり皐月賞でも2着したことから一躍注目されるレースとなるが、そのあとが続かない。2000年から一昨年までの優勝馬からは、エイシンフラッシュとジェネラーレウーノがいずれも3着した程度と、皐月賞との結びつきはむしろ薄い印象が強い。
しかし昨年、状況は一変した。新馬と京成杯を勝って2戦2勝としたソールオリエンスが、京成杯から直行で臨んだ皐月賞を圧勝。史上最少キャリアでの皐月賞制覇に加え、京成杯優勝馬としては初の皐月賞勝ち馬となった。印象的にはもはや革命と言っても過言ではない。
今年の京成杯登録馬は16頭。この中に皐月賞がいるのでは―――なんて、昨年までなら考えもしなかったことを思いながら出走馬を眺めると、新馬を勝ったばかりの1勝馬の馬名が、なぜか皐月賞馬に見えてきたりもする。革命の影響は計り知れない。
人気は新馬戦で非凡な瞬発力を披露したバードウォッチャーだろうか。母がアパパネ、半姉にアカイトリノムスメなら、あっさり勝ってもおかしくない。父ブラックタイドは昨年の優勝馬ソールオリエンスの父キタサンブラックの父でもある。なによりクリストフ・ルメール騎手が引き続き手綱を取るのが心強い。
しかし、それでも我々穴党は重箱の隅を突く。かつて1番人気を背負って勇躍東上してきた関西の有力明け3歳馬が、まるでいいところが無く敗れたシーンを思い出した。
それが2004年の京成杯。勝ったフォーカルポイントを知らぬ人はいても、キングカメハメハを知らぬファンはそう多くはあるまい。
関西の出世レースとして名高いエリカ賞を勝って2戦2勝で2歳シーズンを終えたキングカメハメハが、3歳緒戦に選んだのが京成杯だった。しかし、小回りコースに戸惑ったのか、後方から差を詰めただけの3着に敗れたのである。この敗戦を見て管理する松田国英元調教師は皐月賞回避を決断。NHKマイルカップ~日本ダービーという前代未聞の変則2冠へとつながるのだが、生涯成績は8戦して(7.0.1.0)だから、痛恨の一敗だった。
しかも、大種牡馬となった今もなおキングカメハメハは京成杯を勝てていない。ロードカナロア、ルーラーシップ、ドゥラメンテといった直子たちを通じてのみならず、ブルードメアサイアーランキングで首位になりながら母の父としても未勝利。こうなると不思議としか言いようがない。
逆に2着は多くて、初年度産駒が3歳となった2009年以降の15年間に6頭があと一歩に泣いた。こうなると不思議というより、何か呪いのようなものを疑いたくもなる。
2010年 アドマイヤテンクウ 父キングカメハメハ
2016年 ケルフロイデ 父キングカメハ
2018年 コズミックフォース 父キングカメハメハ
2019年 ランフォザローゼズ 父キングカメハメハ
2020年 スカイグルーヴ 母の父キングカメハメハ
2021年 タイムトゥヘヴン 父ロードカナロア
さて、今年の京成杯に登録のある16頭の血統を見渡せば、実に6頭にキングカメハメハの名前を見つけることができる。これだけの大種牡馬なら不思議なことではない。不思議なのはこうした馬たちが昨年まで勝てていないこと。この中にはアパパネの息子バードウォッチャーも含まれている。果たして新たな革命は起こるだろうか。注目しよう。
***** 2024/1/10 *****