2頭の2歳女王

2023年のJRA賞が発表になった。衆目一致の年度代表馬はイクイノックスで文句なし。注目と言えば今回から分割されたスプリンター部門とマイラー部門だったが、マイラーはソングライン、スプリンターはママコチャと、両部門を牝馬が獲得する結果となった。

もうひとつの注目は最優秀2歳牝馬の行方。かつての阪神3歳Sが牝馬限定GⅠとなった1991年以降、このレースの優勝馬以外から2歳女王が誕生すれば初の出来事となるかと思われたが、革命は起きなかった。最優秀2歳牝馬阪神JFの優勝馬アスコリピチェーノが獲得。ホープフルSで牡馬を破ったレガレイラは31票差で涙を飲んだ。

別路線からの2歳女王誕生を期待したことは、過去に2度あった。

2016年には牝馬リエノテソーロが、並み居る牡馬を蹴散らして全日本2歳優駿を制覇。4戦4勝で無敗の2歳ダート王となったが、最優秀2歳牝馬のタイトルには手が届かなかった。3戦3勝で阪神JFを制したソウルスターリングがいたのである。投票総数291票のうち290票を集めたその能力の高さは、翌年のオークスを圧勝で証明された。ちなみにソウルスターリングの満票を阻んだのはリエノテソーロに投じられた1票。そのリエノテソーロにしても翌年のNHKマイルCで2着に激走し、芝での能力の高さを見せつけている。

2018年にはグランアレグリア阪神JFではなく、敢えて牡馬相手の朝日杯に挑んで話題となった。しかも単勝1.5倍の圧倒的1番人気。その能力は誰もが認めるところだったわけだから、勝てば阪神JFの優勝馬ダノンファンタジーを抑えて最優秀2歳女王のタイトルを獲っていた可能性が高い。しかし残念ながらアドマイヤマーズの3着に敗れている。

今回のケースで言えば、アスコリピチェーノが3戦無敗だったことと重賞を2勝していたことがモノを言った格好だ。レガレイラは重賞1勝。アイビーSでは敗戦も経験している。それでも31票差の接戦になったということは、レコード決着となったホープフルSに相当のインパクトがあったからだ。実際、スポーツ紙が独自に発表する2歳牝馬能力ランキングでは、レガレイラを上位と見る紙面も少なくない。

牡馬では、ひと足早く朝日杯優勝馬以外から最優秀2歳牡馬が選出される出来事が起きている。2019年のホープフルSを勝ったコントレイル。この年の朝日杯を勝ったのはサリオスだ。ともに無傷の3連勝で2歳の時点では甲乙つけがたい戦績だったのだが、コントレイルが197票に対し、サリオスは77票と意外な大差がついた。

ふざけているとしか思えない投票が毎年のように批判を集める一方で、全体として見れば投票者たちの慧眼は鋭い。その眼力がポイントでは計り知れぬ結果を導き出してきた。アスコリピチェーノとレガレイラの直接対決が実現するかどうかは微妙なところだが、両馬の活躍ぶりからは今年も目が離せない。

 

***** 2023/1/9 *****