【新春駅麺探訪③】しぶそば

列車の待ち時間などに手軽に空腹を満たしてくれる「駅そば」は、ファストフードの元祖だ。誕生は全国に鉄道網が張り巡らされた明治時代の1900年前後。乗り換えや機関車交換の待ち時間などに手早く食べられることに加え、手軽な価格も相まって各地へ広がったとされる。

最近では列車の高速化や「エキナカ」の整備による競争激化、あるいは後継者不足という理由により撤退する店も増えたが、私が利用する東急田園都市線の駅では、不思議なことに今も駅そばが高い人気を集めている。屋号は「しぶそば」。二子玉川駅も、溝の口駅も、あざみの駅も、昼どきは行列が絶えない。

「しぶそば」は東急電鉄の関連会社が経営するそばチェーン。東急沿線を中心に14店舗を展開している。茹で立てを素早く提供するのが特徴なので、そば自体が美味しい上に回転も早い。人気があるのも頷けよう。毎年夏と秋の「新そば祭」では生産者直送の新そばが提供されるのも嬉しい。たかが駅の立ち食いそばと侮ってはいけない。

溝の口店は入口の券売機で食券を購入すると、その情報がすぐさま厨房に伝わるシステム。だから食券を手渡す必要はない。空いてる席を探すうちに、食券の番号で出来上がりがアナウンスされるから、カウンターに受け取りに行けばよい。注文したのはコロッケそば。ご覧のようにコロッケは別皿で提供されるので、衣のサクサク感を残したい人も、ツユに浸してモロモロにしたい人も、それぞれの好みで楽しむことができる。

溝の口から大井町線に乗ると次の停車駅は二子玉川。こちらの「しぶそば」は入口のレジで先に注文と会計をするシステムだ。受付の人がレジを操作しながら、「にく~」とか「てんぷら~」という具合に厨房に注文内容を伝えてくれる。あとは食券を持ってカウンターのレーンに並んでいれば、すぐに自分が注文した一杯が出てくる。期間限定の肉そばは豚肉と葱が丼が一面を覆う一杯。そばツユで煮込まれた豚肉は、そばの風味を邪魔することなく旨味を加えてくれる。

引き続き大井町線に乗って終点の大井町駅で降りる。ここからは第一京浜まで歩いて箱根駅伝の応援をするもヨシ、連絡バスに乗って大井競馬場に行くもまた良かろう。しかしその前に大井町の「しぶそば」にも立ち寄っておきたい。こちらのお店は駅の外、大井町線のガード下にある。したがって立ち食いスタイルではない。入口の券売機で食券を買い、カウンターに持っていくと半券を返されるので、それを持って席に座って待つスタイルだ。

Shibu2

ご覧の「鶏竜田そば」は大井町店限定メニュー。ノーマルの「白」と辛い「赤」の2種類があり、それぞれに温・冷が選べる。写真は白の冷。温玉を崩してネギとそばをぐしゃぐしゃに混ぜて一気に啜る。こういう食べ方をしても、そばの風味が失われていないのは立派。うどん贔屓の私だが、実はこっそり蕎麦のまとめ食いをして「蕎麦メーター」を満タンにしながら生きている。「しぶそば」サンには今年もお世話になりそうだ。

 

***** 2024/1/11 *****