新時代の幕は開くのか

私が初めて競馬に接したのは1979年の有馬記念グリーングラスメジロファントムがハナ差の激戦を繰り広げたそのレースは、現在のように12月下旬に行われるレースではなかった。当時、一年の締めくくりは中山大障害と決まっており、有馬記念は12月3週目の日曜日の実施だったと記憶する。

今日の中山メインはその中山大障害。かつての暮れの総決算だが、オジュウチョウサン引退後の障害界を占うという意味では新時代の幕開けとなる可能性も高い。レースは1番人気のマイネルグロンが3番手追走から3コーナー手前の4号竹柵障害で早くも仕掛けて先頭に立った。初距離、初斤量であることを思えばちょっと早い気もする。しかしそんな私の懸念を嘲笑うかのように、そこからは後続を突き放す一方ではないか。ジョッキーもさして追うことなく独走のゴール。それでも3番人気ニシノデイジーに10馬身差だから凄い。

中山大障害を勝ったマイネルグロンと石神深一騎手

今年に入ってからは障害ばかり走って4戦4勝。初めての大障害コースも難なくこなした。母マイネヌーヴェルは全3勝を中山で挙げた巧者。母の弟には中山グランドジャンプを勝ったマイネルネオスや、弥生賞京成杯勝ちのマイネルチャールズがいる血統なら、マイネルグロンが中山で輝くのは時間の問題だった。父ゴールドシップの中山適性についていまさら紹介するまでもない。

新馬戦を勝ったマイネヌーヴェル武豊騎手

それにしても際立ったのはマイネルグロンのその強さである。中山大障害での10馬身差は2002年にギルデッドエージが大差勝ちして以来21年ぶり。それをほとんど追われることなく記録した。しかも相手は昨年の優勝馬だから相手に恵まれたわけでもない。4分37秒9という勝ち時計も優秀。長い歴史の中で3番目に速い。

「障害界のスターになれる素材だと思います」

JGⅠ・11勝目をマークした石神深一騎手は手放しで愛馬を褒めた。オジュウチョウサンとのコンビで一時代を築いた騎手の言葉だと思えば、その言葉の重みはいや増す。

今日のレースは障害新時代の幕開けかもしれない。一方の平地競走もイクイノックスの電撃引退で王者は空位となったばかり。果たして明日の今頃は新時代の幕が開いているのだろうか。

 

 

***** 2023/12/23 *****