博多のうどんと言えばゴボ天。人気の高さを裏付けるのは、その形態の多様さだ。博多バスターミナル地下の人気店「牧のうどん」のゴボ天はご覧の通り厚めの衣にまるっとくるまれたフリッタータイプ。
西鉄天神の駅ビル内に暖簾を掲げる「やりうどん」のゴボ天は、ご覧の通り「槍」そのもの。ビジュアル的なインパクトは群を抜くが、正直言って食べにくい。
「因幡うどん」のゴボ天は「薄輪切り載せかき揚げ」タイプ。私に言わせればゴボウ感はいまひとつなのだが、これぞ博多っ子のソウルうどんだと愛してやまないファンが多いそうだ。
もっともオーソドックスなのは、そぎ切りにしたゴボウを揚げたタイプであろう。東京でも美味しい博多うどんが食べられると評判の内幸町「はし田たい吉」のゴボ天うどんは、ご覧のように別皿でゴボ天が提供される。
これには理由があるらしい。
4枚のゴボ天のうち、まず1枚に塩を振ってそのまま味わう。揚げたてのサクッとした食感と、ゴボウの甘さが味わえる。
続いて2枚程度をうどんのダシに沈める。そこから旨味がダシに染み出すのだという。ゴボ天はのちほど良きタイミングでいただく。
最後に残った1枚は、うどんのダシにサッとくぐらせて、そのまま口へ。ダシを天つゆ代わりに天ぷらを味わうわけ。こちらのゴボ天は天ぷらとしての完成度も高い。
麺は平打ち。柔らかいが博多の割に伸びるのは、そのせいかもしれない。むろん美味い。これは見た目通り。
福岡には「ウエスト」「牧のうどん」「資さんうどん」といったうどんのチェーン店がひしめいている。いずれも福岡にしかない独特の一杯を出すことで地元に愛されてきた。実はラーメンではなく、うどん好きという県民性の現れであろう。個人的には、王者讃岐と勝ち負けに持ち込めるとしたら、それは福岡以外にないと考えている。
***** 2024/3/5 *****