福岡3大うどん(やわコシの筑後)

日本3大うどんと言えば讃岐、稲庭、水沢を指すらしいが、実際にうどんを食べ歩いている身からすれば、讃岐は別格にしても、この括り方にはいささかの疑念を禁じ得ない。肉汁の武蔵野。細切の京都。甘ふわの伊勢。ごぼ天の福岡。味噌煮込みの名古屋だって忘れるわけにはいかない。讃岐のお隣、伊予には鍋焼きうどんの文化もある。

かように全国には数多のご当地うどんが存在し、それぞれの地域に愛され、観光客を呼び寄せている。日本人はとかく「3大」で括りたがる癖があるが、ことうどんに限れば必要性を感じない。

それでも福岡のうどんについて考えるうち、「3大」に行き着いてしまったから困りものだ。突然だが「福岡の3大うどん」をご存知だろうか。博多、長浜、久留米の「3大ラーメン」の間違いではない。うどんの話。とはいえ、私にしても誰かが「福岡3大うどん」と発言するのを聞いたわけではないし、ネットで見たこともない。私がなんとなく決めただけの話。だから知らなくて当然。そう思って読み進めてほしい。

ともあれ、ここでは「福岡3大うどん」を「どきどきの小倉」に「やわふわの博多」、そして「やわコシの筑後」と定める。ともあれつい先日、丸の内線新大塚駅近くで、都内には珍しい筑後うどん専門店を見つけた。

佐賀競馬場周辺の一帯を含む筑後川流域は、米と麦の二毛作が盛んな土地柄で、うどんを食べる文化が古くからあった。その「筑後うどん」の最大の特徴は軟らかさ。吸い物やみそ汁と同じ「汁物」として食されてきたことから、主食のご飯の邪魔にならないように軟らかくなったという。

ただ、「やわい」だけでは博多うどんと変わらない。でも、その道の通に言わせれば「博多と筑後は明らかに違う」と言い切る。いったい何が違うのか。それを確かめるには実際に食べてみるしかない。佐賀競馬場に行ければ良いのだが、あいにくそうもいかないので、こちらの筑後うどん専門店「まがり」にやってきたのである。

こちらの店主は生粋の筑後人とのこと。10年前に仕事で上京したが、筑後うどんを出す店が一軒もないことに寂しさを覚えて一念発起。
4年前にこのお店をオープンしたらしい。

麺は自家製。地元産の「チクゴイズミ」という品種の小麦粉を軟水で練る。塩は熊本「天草の塩」。麺づくりの工程には4日間を要するという。それをご主人が一人でこなしている。

麺は軟らかい。これは博多界隈のうどんと同じ。しかし柔らかさの中にもコシがある。ふわっとした口当たりなのに、啜ればびよーんとしなやかに伸びるその食感が楽しい。なるほど「唇で切れる」とさえ言われる博多うどんとはたしかに違う。

おとといになってようやく令和6年度、すなわち来月以降の佐賀競馬の開催日程が発表になった。遅えよ!と言いつつ、じっくり眺めて遠征計画を練る。せっかくだから佐賀アリーナでB1リーグ・佐賀バルーナーズの試合も観たい。もちろん筑後うどんも食べまくろう。そんなことを考えながら競馬開催日程とにらめっこしていると、時間があっと言う間に過ぎてゆく。こういう時間がいちばん楽しい。

 

***** 2024/3/4 *****