ついに重賞の舞台へ

桜花賞翌日の浦和メインは伝統の準重賞ティアラカップ。ここにデビュー以来無キズの10連勝中のジゼルが出走してきた。(写真は前走のもの)

2024年3月6日 駿風スプリント ジゼル 森泰斗

ジゼルは前走でB2クラスを勝ったばかり。つまり格上挑戦。さすがにこれまで闘ってきたメンバーとは相手が違う。しかも遠征競馬。加えて1400mへの距離延長。試金石と呼ぶにはハードルが多過ぎる。連勝記録を狙うなら地元の1200mを使う方が良い。それでも敢えてここに挑むことはずっと前から決まっていた。この春はティアラカップで権利を取って、重賞しらさぎ賞を狙う。連勝記録に価値がないとは言わないが、タイトルの重みには及ばない。

ちなみに南関東におけるデビューからの最多連勝記録はベルモントアクターが2002年のサンタアニタトロフィーで樹立した17連勝。ただ、それも15連勝までは条件戦だった。どれだけ傑出した能力の持ち主でも、デビューが遅れたり長期休養があったりすると、重賞に出走できるまで10勝以上しなければならないのは今も昔もさして変わらない。

2002年7月24日 サンタアニタT ベルモントアクター 石崎隆之

ベルモントアクターを管理していたのは船橋の出川克己調教師。2歳春に初めて見たときの印象は「小柄で420キロくらいしかなく、どこといって目立つところはなかった」と、それほどのインパクトはなかったという。

3歳1月のデビュー時には493キロと、1年足らずで70キロも増える成長ぶりを見せたが、体質の弱さはなかなか解消しなかった。ツメや脚部の不安に悩まされ続け、6カ月以上の長期休養が3回。トータルの休養期間は2年7か月にも及ぶ。そのためオープン入りまで時間がかかったが、大事に使われたぶんだけ、着実に力を付けることができた。それが無傷の17連勝という結果になって表れたのであろう。

とはいえこのサンタアニタトロフィーだけは、それまでのレースとは勝手が違ったようだ。前走で重賞の船橋記念を勝っていたとはいえ、同じSⅢ格でもサンタアニタトロフィーは前身の「関東盃」の当時から、クラシックやダートグレード級のメンバーが集まることで知られる。しかも、写真を見れば分かるように、大井のマイルでは圧倒的に不利と言われる大外16番枠を引いていた。

それを克服して勝ったのだから強いことは間違いない。だが、その一方で馬には相応の負担がかかっていたと思われる。このレースのあと、18連勝をかけて臨む予定だった報知オールスターカップを直前になって回避。理由は脚部不安であった。3か月の休養を経て、あらためて京成盃グランドマイラーズで18連勝に挑むも、久々が影響したのかまさかの4着。ついに連勝はストップする。生涯初の敗戦をベルモントアクターはどう受け止めたのだろうか。

今日のティアラカップに話を戻す。圧倒的1番人気に推されたジゼルは4角4番手から直線大外に持ち出されると、短い浦和の直線をものともせず豪快に差し切って連勝を「11」に伸ばした。同時にしらさぎ賞の優先出走権も獲得。陣営にとってはこちらの方が大きい。12連勝と重賞初勝利をかけた大一番は、来月19日。今日と同じ浦和競馬場の1400mが舞台だ。

 

***** 2024/3/28 *****