ルーキーの季節

東京にソメイヨシノ開花宣言が出て、プロ野球ペナントレースも開幕した。ひと足先にGⅠシーズンに突入した競馬も含めてようやくの春本番。あさっては年度末だから、その翌日に社会人デビューを控える人も多かろう。

巨人ではルーキーの佐々木俊輔選手が開幕スタメンを勝ち取って話題となった。決して良い当たりではなかったが、開幕戦で初ヒットと初打点は立派なもの。なにせ巨人の野手が開幕スタメンに名前を連ねるのは阿部慎之助新監督以来23年ぶりの快挙。さらに1番打者起用となると仁志敏久選手以来28年ぶりだという。1996年と言ったらエアグルーヴオークスを勝った年ですよ。明後日の大阪杯で人気を集めるローシャムパークの曾祖母だと思えば、歳月の重みもいや増す。

1996年 オークス エアグルーヴ 武豊

さらにドラフト1位の西舘勇陽投手やドラフト4位の泉口友汰選手も出場。DeNAのルーキー度会隆輝選手に至っては、1番でスタメン起用され3ランホームランを放つ活躍を見せた。大相撲に目を移しても110年ぶりに尊富士が新入幕での優勝を果たすなど、スポーツ界では若手の活躍が目覚ましい。

プロ野球には二軍があり、大相撲でも番付によって新人には一定の猶予が与えられる。しかし佐々木選手は阪神のエースピッチャーからヒットを放って勝利に貢献し、尊富士は大関を破って優勝した。二軍や番付といった制度を嘲笑うかのような新人の活躍ぶりには舌を巻く。

競馬ではルーキーに対しては男性なら3キロ、女性なら4キロの減量特典が与えられる。それでもひとつ勝つのはなかなか難しい。10代の少年少女が実戦経験もないまま一線級の騎手とぶつかるのだから当然と言えば当然。だからこそ先週日曜の阪神メイン・六甲Sをルーキーの吉村誠之助騎手が勝ったことには驚きを禁じ得なかった。特別競走には減量特典が適用されない。いわばガチンコの勝負でベテラン相手に勝ったことになる。

新人ジョッキーがメインレースで初勝利を挙げたことが過去に無かったわけではない。有名なところでは武幸四郎騎手の例がある。デビュー翌日にGⅡマイラーズカップを勝ってしまった。JRA史上最短の重賞勝利記録でもある。ただしこれは特別な事例。武豊騎手がメインレースを勝ったのはデビューから半年後だったし、川田将雅騎手にしてもデビュー3年目にようやく達成した。吉村誠之助騎手は自信を持っていい。

昨日の梶谷選手のようなベテランの技を観るのも楽しいが、野球であれ、相撲であれ、もちろん競馬であれ若手の活躍がなければその競技に未来はない。春は未来に思いを馳せる季節でもある。

 

***** 2024/3/29 *****