乙女の戦い

明日は浦和でユングフラウ賞が行われる。桜花賞に向けた最重要トライアルだ。

2009年 ユングフラウ賞 カイカヨソウ・今野忠成

ユングフラウ(Jungfrau)はドイツ語で「若い女」を指すが、スイスアルプスの山の名称ということで「乙女」という訳語を充てられることが多い。その意味からこの時期の3歳牝馬限定レースの名前として冠された。すなわち「乙女賞」である。

ところがこの「乙女」を今度は英語で表すと「メイドン(Maiden)」というらしい。「Maiden」は競馬場で使われると「未勝利戦」の意味になる。南関東SⅡ格付けの重賞レースが「未勝利戦」という名前では、ややこしくて仕方ない。

未勝利戦以上にややこしいのが条件戦だ。英語で「Allowance(アローワンス)」と呼ばれるレースは「条件戦」と訳されるケースがほとんどだが、この「条件」というのが、JRAのように勝利数だけとは限らないのである。

「1着賞金20万ドル以上のレースの勝ち鞍が2つ未満」とか「この3か月間未勝利」とか「芝のレースで2勝未満」とか「距離1800m以上で未勝利」とか、とにかくいろんな「条件」がある。逆に、こうした条件さえ満たせば、どんなに強い馬でもそのレースに出走することが可能となるわけで、GⅠ勝ち馬がこうした「条件戦」に出走ということも決して珍しくない。「アメリカではGⅠ馬でも降級すんのか!」などと驚く人もいるが、ここで言う「条件」はいわゆる「級別」とは別物。それを一律に「条件戦」と訳すこと自体に、そもそも無理がある。

邦訳に無理があるといえば「Lsited(リステッド)」もそれに近い。2019年、それまでJRAで行われていたオープン特別競走を、リステッドと単なるオープン特別に区分けしたことで、そのまま「リステッド」というカタカナ英語が定着したが、それ以前は日本語で「準重賞」と訳されることが多かった言葉である。

実際に我が国で「準重賞」という名称のレースが実施しているのは一部の地方競馬だけ。しかもレースの性格は本来のリステッドのニュアンスとは若干異なる。

Listedとは、その単語の意味通り、競走馬セールのカタログにブラックタイプ(太字)で成績を載せることができる競走のリストに含まれてますよ、という意味である。

ところが、中にはオープン馬が出走できない「準重賞」というのもあり、ブラックタイプの価値と必ずしもリンクしないのが実情だったりする。

ユングフラウ賞も2008年までは準重賞として行われていた。翌09年に重賞に格上げされて今年が16回目。その出走馬の中にイマヲトキメクという一頭を見つけた。パイロの産駒で母の名はオトメチャン。桃花賞2着だから人気かもしれないが、「今をときめく❝ユングフラウ❞ちゃんの娘」とくれば、注目せぬわけにはいくまい。

 

***** 2024/2/20 *****