半年間で14人引退のインパクト

おととい、勝浦正樹騎手がこの中山開催を最後に現役を引退するとの発表があった。JRA重賞17勝でGⅠは2勝。個人的には初GⅠ制覇となったテレグノシスのNHKマイルカップが思い出深い。

2002年 NHKマイルC テレグノシス 勝浦正樹

直線での斜行で1番人気タニノギムレットが大きな不利を受けた。加害馬はテレグノシスである。審議は20分間にも及んだが、勝浦騎手にとっては永遠にも等しい長い長い時間だったに違いない。引退後は競馬の現場から離れるとのこと。JRA通算966勝のベテランはそっと鞭を置く。

この半年の間に現役を引退または引退を表明した騎手は14人となった。この数字はちょっと多過ぎやしないか。そのうち4人が障害ジョッキーであることを、とりわけ筆者は憂慮している。熊沢重文、平沢健治、北沢伸也大庭和弥の4人。昨年は合計28人の騎手が障害レースに騎乗したが、今年は1増4減。ルーキーの坂口智康騎手を含めた25人体制となる。1998年には40人の障害騎手がいたことを思えば、この人数は心もとない。

一方で障害レースの平均出走馬は1998年の9.4頭から、四半世紀を経て11.4頭に増加。今週は我が国最高峰の障害レースが行われる。この機会に障害レースの置かれた状況について考えてみるのも悪くない。

JGⅠレースは暮れの中山大障害と今週の中山グランドジャンプの2レース。ただし、前者は当日の準メイン競走であるのに対し、後者はメインレースである。距離もグランドジャンプの方が150m長く、秋~春を1シーズンとする障害レース体系におけるクライマックスなのだから「我が国最高峰」と言うのは間違いではない。希代の名ジャンパー・オジュウチョウサン中山大障害を3勝したが、グランドジャンプの方は4連覇を含む5勝もしている。真の王者は勝つべきレースをちゃんと知っていた。

どんな記録もいつかは破られる運命にある。だがオジュウチョウサンのJGⅠ8勝、中山グランドジャンプ5勝の記録を破るのは至難だ。不滅と言っても良いかもしれない。それでも今週のマイネルグロンには「JGⅠ連勝」を、イロゴトシには「グランドジャンプ連覇」をそれぞれ期待しよう。とりわけイロゴトシの父はヴァンセンヌ。その母は訃報が伝えられたばかりのフラワーパークである。

もちろんニシノデイジーに対しても「JGⅠ2勝目」を期待してやまない。かつては札幌2歳Sと東スポ杯2歳Sを勝った「二刀流」の才馬。その平地重賞2鞍で手綱を取っていたのは、誰あろう勝浦正樹騎手である。恩人の引退に花を添えたい。2022年の中山大障害オジュウチョウサンを下しての快勝だった。明けて8歳。こと障害では、まだまだ老け込む歳ではない。

 

***** 2024/4/8 *****