ダートでオープン2勝の実績を誇るアルファマムが日曜東京の最終12レース・ペルセウスSに出走する。鞍上は三浦皇成騎手。東京、中京、新潟に良績が偏る彼女だが、左回りが得意というよりも芝スタートが苦手らしい。ゆえに自然と狙うべきレースは絞られる。
そもそもスタートダッシュが早くないタイプである。ゆえにいつも一頭ポツンと最後方を追走している。直線だけで前を何頭抜けるかが勝負の分かれ目。ゴボウ抜きこそが彼女の美学だ。

地上の茎を手に持って地下のゴボウを引き抜くには、一気に、しかも直線的に抜かなくては途中で折れてしまう。それが転じて直線一気に追い抜く様を「ゴボウ抜き」と呼ぶようになった。実際のゴボウの収穫にあたっては畝の両側から堀り進めて、掻き出すように掘り出すものだとは先日書いたばかりだが、火山灰地など地域によっては文字通りの「ゴボウ抜き」で収穫されているところもあるそうだ。
最近では箱根駅伝でこの「ゴボウ抜き」という言葉をやたらと耳にする。しかもご丁寧に「ゴボウ抜き記録」などという言葉まである。歴代1位の記録は2009年大会で日大のダニエル選手が記録した「20人抜き」なんだそうだ。
ちなみに「ゴボウ抜き」という表現が使われるのは10人以上を抜いた場合に限られ、その記録のほとんどは2区で達成されている。つまり、先頭からの距離がまだそれほど離れておらず、しかもそこそこ強いランナーが登場する区間だから。むろん大記録達成のためには1区のランナーの凡走が欠かせない。上位でタスキを受け取ってしまったら、それ以上抜く相手がいないからである。そう思うと、まあ、あまり意味のある記録とも思えませんな。箱根駅伝に参加できるのは、基本的には20チームだから、ダニエル選手の「ゴボウ抜き記録」は当分破られることはあるまい。
では、競馬での「ゴボウ抜き記録」はいったいどれくらいなのだろうか?
競馬の「ゴボウ抜き」は最後の直線だけで何頭抜いたかが焦点となる。しかもその馬が1着でゴールしていなければ記録としての価値は薄い。当然ながら多頭数の方が記録達成の可能性は高くなる。
となれば、1971年の日本ダービーが暫定1位ではあるまいか。史上5番目に多い28頭の出走馬を数えたダービーで、4角24番手から直線だけで23頭を交わして優勝したヒカルイマイである。
ヒカルイマイは先頭のハーバーローヤルを一瞬でかわすと、逆に1馬身の差をつけてゴールに飛び込んだ。これぞ史上最高のゴボウ抜きであろう。「一気に、そして直線的に」というからには、直線でふらふらになりながら、どうにか追いついたという体ではゴボウ抜きの語感に馴染まない。そこには美しさと同時に圧倒的な力量差が求められる。
頭数のことを言わなければトリプティクの富士Sも忘れがたい。9頭立てで4角9番手。日本の馬ではまず届かないような位置から猛然と追い込んで、逆に5馬身の差をつけた。ヒシアマゾンのクリスタルカップも、ディープインパクトの皐月賞も、どれも素晴らしいゴボウ抜きではあったが、トリプティクの走りに見た美しさと力量差には、その衝撃度という点において及ばない。

京王よみうりランド駅前のうどん店「丸喜」では、数量限定でゴボウ天が提供されている。香り、甘味、歯応え、そしてボリューム。どれを取っても申し分ない。寒さが増してゴボウが甘く美味しい季節になってきた。アルファマムのゴボウ抜きに期待しよう。
***** 2024/10/24 *****