葵はどこだ

早起きをして早朝の京都を歩いてみた。とある植物を探す旅である。

スタートは蹴上駅南禅寺を横目に見ながら琵琶湖疎水に沿って北へ向かう。土曜ではあるが観光客の姿は少ない。なにせまだ7時前。しかも京都は花の端境期である。桜はもちろん藤もツツジも既に見頃を過ぎており、紫陽花にはまだ早い。ところどころにサツキの花を見かける程度。サツキを見て翌日のダービーに思いを馳せるのは正当な競馬ファンであると信じたい。人気の一角ファンダムは2400mを果たしてこなせるのか。ちなみに私は今日は10kmくらい歩くことになりそう。果たしてこなせるのか。

大豊神社は西暦887年の創建。境内の大黒社の狛ねずみが人気を集める古刹だが、今は人っ子ひとりいない。

さらに北上して法然院にも立ち寄る。早咲きの紫陽花が咲いていると聞いたが、それらしい姿はない。まあ仕方ないですよね。草花ばかりが京都ではない。代わりに山門の茅葺を愛でる。山門をくぐって目に入ってくるのは白砂壇。砂で水の流れを表わしており、浄域に入る前にその水で心身を清める意味がある。その流れの上には葉っぱの絵が描かれていたが、私が探し求めているのはこの葉っぱではない。

銀閣寺を横目に見ながら疎水沿いをさらに歩く。御蔭通りを左に折れて、叡山電車の踏切を越え、高野川の橋を渡り、ついに辿り着いた先は下鴨神社。ちなみに私が探していたのは葵の葉っぱである。京都を代表する「葵祭」の葵であり、今日の重賞「葵ステークス」の葵。葵祭のメイン会場である下鴨神社なら境内のあちこちで見ることができるに違いない   と思っていたのだが、どこを探してもない。

「祭の頃、いとをかし」

清少納言枕草子にこう記した「祭」とは、もちろん葵祭のこと。また源氏物語には「葵の上」という人物が登場するように、古典文学にもたびたび登場する葵は京都のシンボル的な存在だ。だが、近年は宅地開発や鹿の食害などで自生地が減少し、祭の装飾品として必要な葵の調達すらままならない状況だという。そうとは知らず、葵ステークスの日に葵に触れれば馬券が当たるんじゃないかと思った私は浅はかだった。

若干気落ちしつつ出町柳駅から電車に乗って京都競馬場へ向かう。昼メシを食べ、いくつかのレースをやり過ごすうち、不意に葵を見つけてしまったのである。

それがこちら。

こちら。

10レース桃山Sに出走してきたアオイイーグルは、カレンブラックヒル産駒の5歳牡馬。単勝31倍の9番人気と人気はない。2023年10月に3勝目を挙げて以来1年半余り、勝利から遠ざかっている戦績からすれば妥当なところか。それでも葵Sの当日に「アオイ」が出走してくれば「買い」であろう。そんなわけで単勝複勝馬連総流しで勝負。さあ、果たして結果は   

2025年 桃山S ソーニーイシュー 川田将雅

勝ったのは2番人気のソーニーイシューでした。アオイイーグルは10着。語呂合わせで馬券が当たれば苦労はない。さあ次はメインレース。競馬の「葵祭」の始まりだ。

  

***** 2025/5/31 *****