エクリプスの名において

全米サラブレッド競馬協会が選出する「エクリプス賞」各部門の受賞馬が、間もなく発表される。最優秀古馬ダート部門牡馬の最終候補3頭にノミネートされているフォーエバーヤングが年度代表馬に選出されれば、日本調教馬として史上初の快挙。これほど日本で注目されるエクリプス賞も過去にあるまい。

2024年 東京大賞典 フォーエバーヤング 坂井瑠星

米国の競馬表彰にその名を遺す「エクリプス」は、歴史上もっとも有名な競走馬であり、18戦全勝という生涯成績もさることながら、その勝ち方が極めて圧倒的だったことで、現役当時より既に歴史的名馬の評価を得ていた。

エクリプスについては様々な伝説が残されているが、中でも有名なエピソードはデビュー戦でエクリプスが1着でゴールした時に、後続馬が「見えなかった」という逸話であろう。しかし実際にそんなことが起こり得るのだろうか。

エクリプスの馬主はデビュー前からエクリプスが大変な能力の持ち主であることを見抜いていた。そこでデビュー戦の前に「このレースの全着順を的中できる。エクリプスが1着で、2着以下は“なし”」と賭け相手に言ったのである。

当時のルールでは、1着馬から1ハロン以上遅れた場合は「失格」とされていた。すなわち「2着なし」というのは、エクリプスが2着に1ハロン以上もの大差を付けて勝つという意味である。実際にそのヒートでは2着に入賞できた馬がなく、馬主の予想は見事的中。この話が後に「エクリプス1着。2着馬はまだ見えない」という誤った逸話として日本国内で伝わることになった可能性が高い。これは当時の翻訳者がこうしたルールを知らなかったことから、2着の「なし」を「見えない」と訳したのではないか。

しかしこうした誤解は、エクリプスの強さをなんら損なうものではない。むしろあまりの強さゆえ生まれた美しい伝説と捉えるべきなのだろう。18戦18勝のうち、8勝までが実は単走だったというエピソードも、ケタ外れの強さを誰もが認めていたことを裏書きしている。ちなみにフォーエバーヤングから血統表の父系を遡ると23代父がエクリプス。果たして日米同時年度代表馬の快挙はなるのか。海の向こうから吉報を待ちたい。

 

***** 2026/1/22 *****