クライマックスは9頭で

東京大賞典は10年ぶりの9頭立て」

ネットニュースの見出しにそう書かれていた。決して間違いではない。でも本質的な部分が抜けている。10年前、2013年の東京大賞典に出走投票したのは10頭だった。ところがレース前日にプロディージュが右前の球節炎により競走除外。結果的に9頭立てになったに過ぎない。出馬投票時点で10頭に満たなかったという点においては、前代未聞の出来事ということになる。

2013年の東京大賞典に出走した9頭の内訳は、JRA所属馬が当時の出走枠上限の5頭に対し、地方所属馬は4頭。ちなみに除外となったプロディージュも地方所属であった。翻って今年はJRA7頭に対し地方が2頭という構図である。

2013年東京大賞典を勝ったホッコータルマエ

ホッコータルマエが勝った10年前のレースには笠松からトウホクビジン、金沢からカキツバタロイヤルという全国レベルの実力馬が遠征してきていた。カキツバタロイヤルはJRAのローマンレジェンドに先着して5着と健闘している。そういう意味では、同じ9頭でも今年のレースはJRA対大井(ミックファイア)という図式が強い。

思い返せば、今年は全国各地で次々とスターホースが誕生する年でもあった。道営ではベルピットが、高知ではユメノホノオがそれぞれ三冠を達成。岩手でもミニアチュールが牡牝合わせて4冠を制する快挙を為した。名古屋ではセブンカラーズがデビューから8連勝で東海ダービーを制覇。金沢でもショウガタップリがデビューから10連勝で石川ダービーを圧勝している。兵庫のダービー馬スマイルミーシャは園田金杯古馬相手にも勝利し、名実ともに兵庫最強馬に上り詰めた。これほどのスターホースが誕生した年は史上空前であろう。

それなのに、全国ダート界の一念の総決算たる東京大賞典に、他地区から一頭も出走が無いという事実に対し私はひどく落胆している。レベルが高過ぎることの裏返しであることは百も承知。しかし、JRA勢はレモンポップとデルマソトガケの東西両横綱を欠きながら、それでも7頭の枠をちゃんと埋めてきた。JRAの出走枠上限が10年前と同じ5頭だったらと思うとゾッとする。

こうなるとミックファイアとマンガン以外の地元勢に怒りの矛先を向けたくなる。東京記念戸塚記念はいったい何のためにあるのか。S1レースを乱立させて身内に大盤振る舞いした挙句の果てがこのザマでは、年明けから始まる新ダート3冠路線の先行きも危うい。

10年前の社台グループ会報誌は、ダートグレードレースで少頭数競馬が続く問題の解決策として、当時5頭だったJRA出走枠を増加すべしと提言していた。しかしJRA枠が7頭に増えた現在でも、こういうことが起きる。いっそ10頭に増やしてはどうか。それなら地方からの出走がなくても国際GⅠとして恰好が付くではないか。文字通りの「馬場貸し」を目の当たりにすれば、関係者の気持ちも変わるかもしれない。

 

 

***** 2023/12/26 *****