寒中の菜の花

今日の中山10Rは初春ステークスで11RはニューイヤーS。明日は京都で新春杯である。すっかり身体に馴染んだ1月3週目の番組だが、テレビ中継を観ていた娘は「競馬はお正月が長いよね」と呟いた。元日以来のほとんどを家でゴロゴロして過ごしている私に対して、「いつまでも正月気分でいるな」という嫌味だったのかもしれない。

競馬に携わっているといないとでは四季の移ろいを感じる度合いがまるで違う。日本の競馬が海外のそれと決定的に異なる点を挙げるならば、春夏秋冬四季折々の競馬が楽しめることではないかとさえ思う。

もちろんこれは競馬に限ったことではなく、我が国固有の風土の話に帰結することも事実。だが、一年を通して行われる競馬の中にあっては、どこかで区切りが求められるもの。それが日本の四季にピタリと当て嵌まっている事実は見逃せない。そして、その季節感をより一層掻き立ててくれるのが、レース名である。

季節感溢れるレース名の代表格は「桜花賞」「皐月賞」そして「菊花賞」のクラシック3レースであろう。英国に範を取っておきながら、3歳牝馬による春のマイル戦に「1000ギニー」ではなく、「桜花賞」という美しい名前を付けた先人のネーミングセンスには、ただ敬服するばかりだ。

そんなことを思いながら、今日の中山出馬表をあらためて眺めれば、「ニューイヤーS」「初春S」に並んで「菜の花賞」というレース名が飛び込んでくる。

そりゃ、房総半島の南端などでは菜の花が咲いてるところもあるだろうけど、普通「菜の花」と聞いて思い浮かべる季節はやはり春であろう。歳時記でも「春(晩春)」の季語と記載されているし、実際1999年までは、このレースは3月に行われていた。こと季節感という視点に立てばそれが正解だと思う。暦の上ではまだ寒の内。来週末からが大寒。寒さはこれからピークを迎える。

3月に行われていた当時は牡馬混合のオープン特別として行われていた。1994年の優勝馬はフィールドボンバー、96年はトキオクラフティ―。当時の時流を反映してか、優勝馬には外国産馬の名前も目立つ。03年の優勝馬ソルティビッドも外国産馬。ご存じアパパネの母であり、すなわり明日の京成杯で人気を集めるバードウォッチャーの祖母でもある。

寒の内に菜の花にまつわるレースを行う裏には、「一足早い春を感じて欲しい」という意図が隠れているのであろう。競馬だけに「一足早い」というのは決して悪い話ではないかもしれない。しかし、今日の中山競馬場は視界を遮るほどの激しい雪に見舞われた。寒さに震えながらの菜の花見物は、正月ボケのファンの身体にひときわ堪えたに違いない。

2015年 菜の花賞優勝 クイーンズリング(G・ブノワ)

 

***** 2024/1/13 *****