クロフネの真骨頂

近年のフェブラリーSは、芝の実績馬がダート適性を試す場にもなりつつある。しかし、その挑戦が厳しい結果に終わることは歴史が示してきた。

2017 デニムアンドルビー 16着
2013 カレンブラックヒル 15着
2012 グランプリボス   12着
2010 ローレルゲレイロ   7着
   リーチザクラウン  10着
   レッドスパーダ   12着
   スーパーホーネット 15着
2009 ダイワスカーレット  回避
2008 ヴィクトリー    15着
2007 オレハマッテルゼ  16着
2001 トゥザヴィクトリー  3着
2000 シンボリインディ   9着
   キングヘイロー   13着
1999 ビッグサンデー    9着
1998 ブレーブテンダー  11着
   イナズマタカオー  16着
1997 マイネルブリッジ  12着

一方で、フェブラリーSにこだわらなければ初ダートの重賞レースで、いきなり結果を出した馬がいないわけでもない。出遅れながら直線で突き抜けた根岸Sのモズアスコットも、中山ダート1200mを3馬身差で独走したカペラSのメイショウボーラーも、どちらも初めてのダートだった。のちに二刀流のチャンピオンになるような馬は、初めてのダートで足踏みはしない。いきなり能力全開で砂適性を見せつけるのである。

クロフネが東京ダート1600mで1分33秒3という破格のタイムをたたき出したのも、馬にとっては初めてのダート戦だった。このときは神戸新聞杯から始動。そこから天皇賞秋という青写真である。しかし当時の天皇賞外国産馬に対する出走頭数の上限があった。出走できるのは2頭のみ。メイショウドトウアグネスデジタルに次ぐ出走順3番目となったクロフネはフルゲート割れにもかかわらず天皇賞を除外となった。しかし、やむなく前日の土曜に行われた武蔵野Sで脅威の能力が明らかになるのだから競馬はわからない。やはり塞翁が馬なのである。

2001年 NHKマイルC クロフネ武豊

クロフネは通算6勝のうち4勝をレコードで飾ったが、その内訳も芝とダートが2勝ずつだから「二刀流」の看板に偽りはない。その能力の片鱗は産駒にも受け継がれている。

2013年 しらさぎ賞 ナターレ的場文男

クロフネ産駒の牝馬ターレ南関東を中心に通算9勝と活躍した。父譲りの白い馬体をダイナミックに使う走法で、同期でライバルのクラーベセクレタと一緒に東日本大震災後の地方競馬会を盛り上げた一頭である。しかし彼女が受け継いだのは毛色だけでない。ナターレ南関東のダート重賞を3勝する一方で、盛岡に遠征して芝の重賞・OROカップを連覇する偉業を為している。しかも2年目はレコード勝ちだった。二刀流とレコード。これぞクロフネの真骨頂であろう。

そのナターレの息子があさってのフェブラリーSに出走するガイアフォース。セントライト記念勝ちに加え、安田記念4着、天皇賞秋5着の実績からすれば、能力的にはGⅠでも通用するはず。しかし、フェブラリーSが初ダートの馬たちに与えてきた試練の歴史を見れば、馬券的には飛びつきにくい。

しかし、先に紹介したフェブラリーSの壁に跳ね返されてきた初ダートの面々たちに、クロフネの血を見つけることができないことも事実だ。ガイアフォースには芝でレコード勝ちの実績もある。近親に芝とダートの双方で活躍したリミットレスビッドの名前があるのも心強い。

クロフネ、ナターレと続いた二刀流の血が覚醒するとすれば、今回の可能性はじゅうぶんにある。もし歴史的瞬間があれば、馬券を離れて喝采を送りたい。

 

***** 2024/2/16 *****