チャンス到来

ダートのチャンピオン級がこぞってサウジに向かってしまい空洞化が叫ばれるフェブラリーSだが、一方で我が国のダートレース体系が大きく改革される年の最初のダートGⅠとあってスタンドの熱気はむしろ例年に比べて増している感がある。

地方馬3頭の枠が埋まったのも実に4年ぶり。しかも2年連続でNAR年度代表馬に輝いたイグナイターと、無敗の南関東3冠馬ミックファイアの参戦となれば、メイセイオペラ以来四半世紀ぶりの地方馬優勝を期待せぬわけにはいかない。実際、普段はJRA競馬場では見かけぬ地方競馬関係者の姿もチラホラ見かけた。

その「期待」はパドックを見て「予感」に変わる。JRAの13頭、とくに人気上位馬がパッとしない。GⅠのパドックに溢れるオーラのようなものを、どの馬からも感じることができないのである。

単に私の眼が鈍っただけという可能性はある。なにせ「私は目利きができない」と先日書いたばかりである。なんであれ、ウシュバテソーロとレモンポップの2トップ不在に加え、他のJRA所属馬もパッとしないとなれば地方馬にとっては千載一遇のチャンスだ。「空き巣」呼ばわりされても結構。メイセイオペラ以来の快挙を再び目撃したい。

結果はご存じの通り。ペプチドナイルが初重賞制覇をGⅠで飾るという快挙を為した。藤岡祐介騎手は6年ぶり2回目の、そして管理する武英智調教師は初めてのGⅠ優勝。おめでとうございます。

波乱の要因はやはりメンバーにあろう。レモンポップを筆頭にチャンピオン級はサウジ遠征。ドライスタウトやウィリアムバローズといった安定株は休養。この1年間でJRAダート重賞を勝った馬も2頭しかおらず、そのうちの1頭セキフウはしっかり3着を確保したのに13番人気に甘んじていた。ちなみにセキフウが勝ったエルムSで1番人気に推されながらブービーに敗れたのが、今日勝ったペプチドナイルである。

ハイペースでレースが進んだ割に終わってみれば1分35秒7という平凡な時計。9レースに行われたヒヤシンスSからコンマ6秒早いだけではGⅠの看板が泣く。

今年のフェブラリーSがGⅠの基準となる「115」のレーティングを得ることはおそらく難しいだろう。しかし単年だけを切り取れば、そういうこともある。サウジカップへの流出を阻止するために、日程変更や賞金増額といった指摘も出るだろうが、簡単な話でもない。それよりも私はそんなフェブラリーSでも勝負にならなかった地方馬3頭を憂う。マイルという距離がイグナイターには長く、ミックファイアには若干短かったか。それでもペプチドナイルは初のマイル戦を克服して勝った。メイセイオペラが為した仕事の大きさを痛感する。

 

***** 2024/2/18 *****